ムラのある街を飛び出して

関西で生まれ育った私が,東京暮らしを始める話。観劇記録が多めです。

ポーの一族(花組)感想

2018-01-03 15時公演
@ 宝塚大劇場

あけましておめでとうございます。
今年もちまちまと演劇記録をつけていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

年末年始で関西に帰省することができたので、諦めかけていた宝塚のお正月公演を観てきました。

演目は『ポーの一族』。
ミュージカル・ゴシックです!

ミュージカル・ゴシックといえば、月組『薔薇の封印 -ヴァンパイア・レクイエム-』を思い出す人が多いのではないでしょうか。

薔薇の封印は『ポーの一族』のオマージュと言われており、薔薇の谷の設定などは、原作者である萩尾望都先生の許可を得ていると公式に記載されています。

薔薇の封印は私も大好きな演目で、何度もDVDを観ています。

ポーは永遠の少年という形で描かれていきますが、薔薇の封印に出てくるフランシス(紫吹淳)とミハイル(彩輝直)は、青年の容姿を保ちながら色々な時代を旅していきます。
修道僧や亡命貴族、ダンサーに錬金術師と、年代が変わるたびに魅力的な装いで登場してくるトップスター達は圧巻です。
紫吹さんの退団公演ということで、一本ものであるにも関わらず、ダンスが大量に盛り込まれているのも見どころですね。

私は彩輝さんを追いかけていたので、『荒ぶる魂』をエンドレスリピートしてました。観終わった後に、頭の中でエバーライフ!と回るのは、きっと私だけじゃないはず。

荒ぶる魂

荒ぶる魂

たしかDVDは生産終了していたかと思いますが、ポーを観て楽しかった! という人は、スカイステージでもたまにやっているみたいですし、こちらの作品もオススメです。小池先生の『バンパネラの世界を舞台上で表現したい!』という熱い想いが伝わってきますよ。

前知識はその程度で、実は『ポーの一族』に関しては、原作を数話読んだことがある程度でした。
ですので、あくまで“宝塚歌劇”による『ポーの一族』の感想のみを記載させていただきます。


まず劇場に入ると、オケ隊の生演奏が出迎えてくれました。これを聴くと、新年を迎えたんだなーという気持ちになります。

宝塚大劇場では、三が日の開場時に、歌劇のオーケストラピックアップメンバーによるロビー・ウェルカム演奏が楽しめます。

私が聴いた曲目は、
・世界の王(ロミオとジュリエット
・金色の砂漠(金色の砂漠)
・炎の中へ(THE SCARLET PIMPERNEL)
・闇が広がる(エリザベート
ランベス・ウォーク(ME AND MY GIRL)

だったかと。

みりおさんが出演された演目で揃えていたみたいです。

一緒に行った叔母が「オケが『ひとかけらの勇気』やってたね〜!」と嬉しそうに話していたので、もしかしたらスカピンの楽曲はそちらだったかもしれません。記憶が曖昧です。

仕方ない。その後に観た舞台の印象が! 強すぎて! 吹っ飛んでったんですよ!(言い訳)


あらすじはだいたいこんな感じ↓

1964年、西ドイツのフランクフルト空港にバンパネラ研究家が集まった。

100年以上にわたって語り継がれてきたバンパネラ伝説が、ドン・マーシャル、バイク・ブラウン4世、マルグリット・ヘッセン達によって明かされてゆく。


イギリスの片田舎、スコッティの村で囁かれ続けてきた噂話。
崖の上の館に暮らすポーツネルの一族は、時を止め、生き続けるバンパネラらしい。

そのポーツネルの館で育てられていたのが、幼いころにスコッティの村近くの森に置き去りにされた、エドガーと妹のメリーベル。

エドガーは、ポーツネル一族に関する噂を信じていなかったが、館の秘密の広間にて行われた婚約式をのぞき見た際に、彼らが永遠の命を持つバンパネラ、“ポーの一族”であることを知ってしまう。

一族の正体を知ったエドガーは、愛する妹メリーベルを守るため、運命を受け入れ、“ポーの一族”に加わることになる。

終わりなき時を生きる運命を背負ったエドガーは、時を超え場所を変えて、生き続けていく。

そして舞台は1879年に。
エドガーは義理の両親であるポーツネル男爵夫妻と、“ポーの一族”として生きる道を選んだメリーベルとともに、新興の港町ブラックプールを訪れる。

そこで出会ったのは、町で最も強い力を持つトワイライト家の跡取り息子、アラン・トワイライトだった。

望まずに過酷な運命を強いられたエドガーと、生まれながらにして定められた人生を歩まなければならないという苦悩を抱えたアラン。
心を閉ざし、孤独に生きる二人は、次第に惹かれ合っていく。

エドガーがアランを仲間にしたいと目論む一方で、ポーツネル男爵夫妻は、ホテル・ブラックプールで診療所を開くジャン・クリフォードとその婚約者ジェインを一族に加える算段を立てる。

大老ポーはそんな男爵の選択を認めつつ、『海辺の小屋には近づかないように』と忠告を残すのだった。

一方、霊能力者のマダム・ブラヴァツキーは大老ポーの魂に触れ、クリフォードとその友人バイク・ブラウンに銀の弾を手渡し、いずれその銃弾が必要となることを告げる。

そして男爵夫妻は、クリフォードを仲間に引き入れるべく行動を起こすのであった。


以下、ネタバレ注意






何百年にも渡るエドガーの旅をどのように描いていくのかと思っていましたが、バンパネラ研究家に語らせるという形で、エドガーの幼少期から順を追って物語が進んでいきました。

幼いエドガーが赤ん坊のメリーベルとともに森に置き去りにされた1744年から、マルグリット・ヘッセンの甥(グレンスミスの玄孫)ルイス・バードの通うガブリエル・スイス高等学校にイギリスからの転校生としてアランとエドガーが現れる1959年までが、足跡として語られていきます。

この作品のミュージカル化が悲願であった小池修一郎先生が脚本・演出を担当されていますが、70人を超える出演者の一人ひとりに原作の雰囲気を崩さぬよう役が与えられており、物語も細かく練られています。
イケコの30数年の想いが詰まった集大成といっても過言ではないと思います。

原作未読としては、追いかけなければ展開に置いていかれそうで必死でしたが、原作に対する愛がひしひしと伝わってきました。

ベルばらもそうですが、最近の宝塚は原作を知っていればいるほど、舞台を楽しめるような細かいネタが放り込まれている気がします。

今回は萩尾望都先生が作詞協力をしていたり、漫画の名場面が台詞そのまま引用されていたりするので、原作ファンは「こんな細かいところまで舞台で再現してくれるの?!」と感じられるかもしれませんね。

メインキャストは以下の通り。

エドガー・ポーツネル:明日海りお
シーラ・ポーツネル男爵夫人:仙名彩世
アラン・トワイライト:柚香光
大老ポー:一樹千尋
カスター先生:飛鳥裕
老ハンナ:高翔みず希
レイチェル:花野じゅりあ
フランク・ポーツネル男爵:瀬戸かずや
ジャン・クリフォード:鳳月杏
バイク・ブラウン/バイク・ブラウン4世:水美舞斗
リーベル:華優希

明日海さん扮するエドガーは、少年の姿を保つバンパネラ
最初から最後まで、トップスターが少年を演じるという挑戦役です。

幕が開くと、そこいたのは神秘的な雰囲気をまとう、まさに本の中から抜け出てきたようなエドガーの姿!

もう一度言うと、私は原作をきちんと読んだことがありません。
それでもその空気感には思わず息を呑みました。アランだけでなく、観客みんながエドガーに気圧されたはず。

今回明日海さんは、楽曲をそつなく歌いこなすというより、エドガーの葛藤や苦悩を歌声にのせて表現されていました。
容姿の変わらない役柄でありながら、複雑な心情を抱える少年を、魅力たっぷりに体現されているのが素晴らしい。

小池先生の『エドガーはいた』という言葉に、全て込められていると思います。
最初から最後まで美しかったです!

そしてトップ娘役・仙名さんのシーラ。
キャスティング発表まで、エドガーの最愛の妹・メリーベルを演じると信じて疑いませんでした。

小池先生には1789、All for Oneに引き続き今回も驚かせてもらいました。

宝塚の公式HPには、シーラに対してエドガーは憧れを抱いていると書かれていたので、叶わぬ恋心が軸になるのかと思いきや、そんなことは全くありません。

むしろ、作中ではシーラとフランクの純愛がとても丁寧に表現されていきます。

そんなシーラさん、一族に加わるまでの紆余曲折をさらっと語り流します。
苦労しても純粋さを失わない、ひたむきな姿には好感が持てました。それにしても、フランクとの最期は美しすぎて、本当に切ないです…。

そしてアラン役の柚香さん。
男性役でありながら、エドガーの相手役(といっても過言ではない)を務めます。

軽くあらすじは知っていたので、シーラさんが「永遠の時を生きるからこそ、愛が必要なのよ」とエドガーに説くシーンでは、いやいや彼が選ぶのは男性ですよ!と言いたくなったのですが、この作品に性など関係ありませんでした。

エドガーとアランは、二人にしか分からない絆で結ばれていて、そこには私たち観客たちにも踏み込めない世界が広がっていました。

個人的には、歌詞がはっきり聞こえていれば、もう少し感情移入ができたかな?と思います。

私が観た回は、ピンマイクの調子が良くなかったのか、第一幕は結構な出演者の声がこもって聞こえました。
残念でしたが、都度改善されますので今後は大丈夫かと。

舞台の大半でバンパネラを演じる明日海さんと違って、アランは終盤まで人間。人生を悟りながらも、少年らしい演技を保ったまま突っ走っていってほしいです!

リーベル役の華さんは終始可愛らしい!
10代の少年たちが、次々と惚れていく気持ちもよく分かる。

十字架に恐れおののくメリーベルに対し、エドガーは「あいつは弱すぎた」と漏らしますが、エドガーも讃美歌に驚いて逃げ出したりしています。

二人ともバンパネラとして長い時を過ごしていますが、どこか弱い一面を持ち合わせているのは、成人して一族入りを果たしたシーラとは違い、人格形成がまだ完全ではない幼い時分に一族へ加わったためでしょうか。

リーベルを守るためにバンパネラになったエドガーが、最愛の妹を救うことができなかったところは、本当に悲しいですし、なんならメリーベルを撃ったクリフォードが憎くなります。

そんなクリフォード役の鳳月さんは、表面的には好青年を装いながらも、裏で色々な女性に手を出す好色を演じ分けます。
ひどい役回り。しかしそのクリフォードさんを慕い続けるジェインが、また一途で良い。

しかし、女性たちを魅了してやまない“抜群なビジュアル”とは。
クリフォードに関しては、外見のみで一族入りが決定したのではないかと疑ってしまいます。笑

最後に、シーラの相手を務めるフランク。
すらりとした瀬戸さんは、ダンディーな男爵役をスマートにこなします。
スーツとか燕尾服とか、抜群に似合うんだよな、あきらさん…。

二番手だった芹香さんの組み替えもありましたし、今後花組での瀬戸さんの活躍を期待していきたいです!

*もうひとこと*
薔薇の封印では、過去から現代に至るまでに、フランシスとミハイルがパリやベルリンを訪れます。

ジプシーダンサーに扮したフランシスが、1666年にサンジェルマン宮殿で国王ルイ14世にダンス指導をするシーンがあるのですが、All for Oneを観た時もこの作品を思い出して、少し面白かったです。