ムラのある街を飛び出して

関西で生まれ育った私が,東京暮らしを始める話。観劇記録が多めです。

ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜(雪組)感想

2018-01-10 13時30分公演
@ 東京宝塚大劇場

ポーの興奮冷めやらぬまま、観てきました。ロベスピエール

最近、フランス革命前後のヨーロッパ物が多いですね、宝塚。
いや、大好きだから嬉しいんですけど!

今回は雪組新トップコンビの望海さんと真彩さんの大劇場お披露目公演になります。

先に観た姉から聞かされたのは、
「ミイラ取りがミイラになる」
ロベスピエールの感情が一瞬にして切り替わる」
「スパボジャ(SUPER VOYAGER! のことらしい)はマスターしていくべき」
という謎の情報だけ。

でも、見終わったらその意味が分かりました。
ポンポンを持って、ダンスを完璧に踊っているお客さんがたくさん! すごい!

今回の主人公は、タイトルからも分かるように、革命家のロベスピエール

ロベスピエールといえば、私は東宝1789の古川雄大さんが大好きです。

衣装といいダンスといい、古川くんにはピッタリの役で、映像化されなかったのが本当に残念。しかし次の1789は、まさかのロベピキャスト替えという…。

悲しいですが、代わりにモーツァルトという大役をされるので、そちらに期待しています!

話を戻しますが、その1789の中で、ロベスピエール岡幸二郎さんの演じる貴族将校・ペイロールに足蹴にされるシーンがあります。
言葉の通り“足蹴”
地面に伏している古川ロベピの頭を、ぐりっと踏みつける岡さん(ここの古川くんはなんだかとっても色っぽくて、すごくいい演技してました)。

ロベスピエールは、国王陛下の名の下に!と自分を踏んずけてきたペイロールにイラァっときた上に、“革命の兄弟”とまで呼んでいたロナンの命を奪われて、次第に心が荒んでいったんだろうなあ…と感じられるのが東宝1789だったので、今回のひかりふる路は、大切なものを奪われたロベスピエールが、革命の理念を捻じ曲げられないように権力を振るった結果、粛清弾圧の恐怖政治と呼ばれる未来に結びついてしまう、なんて筋書きなのかなと予想したりしていました。

あらすじはだいたいこんな感じ↓

1792年11月13日、パリではフランス国王ルイ16世の裁判が行われていた。
その場には若き革命家、マクシミリアン・ロベスピエール(マクシム)の姿もある。

急進派のジャコバン派に属するサン=ジュスト達は、穏健派のジロンド派に国王の存在意義を問いかけ、ルイ16世をギロチン台へと導く。

“ジロンド派の女王”の異名を持つロラン夫人や政治家・タレーランは事態を見守りつつ、転覆の機会をうかがうことにする。

新しい時代の訪れに沸くフランスだったが、その裏側で犠牲になる者も少なからず存在した。元貴族のマリー=アンヌは、革命によって家族と婚約者を失う。彼女は革命の中心人物であるマクシムを恨み、復讐を決断するのだった。


ジャコバン・クラブでは、司法大臣を務めるジョルジュ・ジャック・ダントンやジャコバン思想の新聞を発行するジャーナリストのカミーユ・デムーランが、マクシムと熱い議論を交わしていた。
彼らは革命の同志であるとともに、固い友情で結ばれた間柄で、これからのフランスのために力を尽くすことを誓い合う。

ジャコバン・クラブに潜り込んだマリー=アンヌは議員たちに絡まれるが、そこで救いの手を差し伸べたのがマクシムだった。
仇を目の前にして、心が騒ぐマリー=アンヌ。そしてマクシムも、彼女に対して惹かれるものを感じるのであった。


場面は変わり、ジロンド派に呼び出されるダントン。
国王処刑により、他国からの反感を買っていたフランスを守るため、ダントンはイギリスに多額の機密費を流していたのだが、約束は反故にされてしまう。
ジロンド派に弱みを握られたダントンは、防衛戦での指揮を担うことになるが、警備が手薄になった国内では反革命分子による内乱が勃発し、混乱を極める。

絶望的な状況で、マクシムはマリー=アンヌに夢を語った。
人には心があり、その心によって互いに憎しみ、争い、奪い合っている。その連鎖を止めることが自分の願いであり、革命の目指す道だと。

マクシムはマリー=アンヌに愛を打ち明け、過去は問わないと歩み寄る。
彼のひたむきな姿に心打たれたマリー=アンヌも、過去を乗り越え、マクシムとともに未来を生きていく決心を固める。

タレーラン達は、革命をさらに内側から崩壊すべく、内紛に関する書簡やダントンの行動をジャコバン派にリークした。
友の裏切りに衝撃を受けるマクシム。
彼は革命を守るべく立ち上がるのだった。全てはマリー=アンヌとの愛のために…。


以下、ネタバレ注意





もともと公演チラシを見て、色々気になっていました。
厳しい瞳のロベスピエール。そして、彼に抱かれるマリー=アンヌは、ナイフを握りしめている。

なので、ロベスピエールはマリー=アンヌを愛しながら、彼女の行動に違和感を抱くといったスカピン的な展開が序盤から続くかと思っていましたが、むしろ大半は純愛物語でした。

恋なんかしてる場合じゃないよ!と一笑していた熱血革命家のマクシムは、マリー=アンヌと出会い、無償の愛を注ぐようになります。

言いたくないなら、過去も素性も話さなくていい。ただ愛して共に歩んでくれるのであれば…というひたむきな想いを向けられたからこそ、マリー=アンヌは悲惨な過去を乗り越える決意ができたのでしょうね。

『愛の為に、世界を変える。』というキャッチコピーに、二人の願いが込められているんですね。観始めたら大納得でした!

ひかりふる路はフランク・ワイルドホーンさんが作曲を担当されていることもあり、楽曲を中心に物語が進んでいきます。
一幕だけの芝居なのに、あれだけの曲が使われているとは、なんとも贅沢。ある意味、宝塚らしからぬ舞台だったかもしれませんね。輸入物を観ている気分でした。

外部のミュージカルでしょっちゅうワイルドホーンさんの曲を聴いていたので、宝塚に楽曲を書き下ろしたのが NEVER SAY GOODBYE 以来だとは思っていませんでした。いやぁ流石です。良い曲ばっかりでした。

マクシミリアン・ロベスピエール(望海風斗)

トップ就任おめでとうございます!
星逢一夜やるろ剣で心に刺さる演技を観せてくれただいもんさん。今回は革命家ロベスピエールの様々な感情を、楽曲にのせて紡ぎます。

序盤は華がない、というより“革命家の一人”という立ち位置をしっかり守っているのですが、マリー=アンヌに恋をしてからは、どんどん魅力を前面に打ち出していきます。すごいです。そしてイケボ。

誰よりも革命の先を夢見て、苦悩し続けるマクシム。
タレーランの陰謀により、最後は処刑されることになりますが、幕が降りるまで美しい。凛とした後ろ姿がとても素敵で、だからこそ切なかったです。

そしてレヴューがまた良かったー!
心を表したような、素直な楽曲が胸に響きました。これからも頑張りますので、というひたむきな気持ちが伝わってきて、新生雪組がますます楽しみです。

・ マリー=アンヌ(真彩希帆)

与えられた楽曲は複雑で、感情の移り変わりも激しい難役。
感情を吐露し続けるマクシムと比べても、迫力を感じる存在でした。

肉親や婚約者を奪った革命を否定するために、マリー=アンヌは『彼が革命そのものだというのなら』と、マクシムの暗殺計画を歌にのせて語ります。

貴族らしい気品を備えながら、それでいて、荒々しいむき出しの感情が溢れていた真彩=アンヌ。正直、この時点では理想を語るマクシムよりも、マリー=アンヌの復讐劇を応援したくなりました。

しかし、マクシムと出会ったマリー=アンヌは、いつしか彼の描く未来を望むようになる。
絶望を抱えていた彼女は、新たな友人や家族と呼べる存在を手に入れ、明るい今後に向かって歩きだします。

その後の展開が予測できるだけに、ここで終わっていればハッピーエンドなのに! と思わず拳を握ってしまいました。

争いのない未来を夢見て、一度は過去を捨てる決意をしたマリー=アンヌですが、マクシムが人々を苦しめてまで革命を推し進めようとする姿を見て、彼を否定します。

犠牲の上に成り立つ幸せは、本当の幸せではないというのが彼女の考えですから、ここで悲しいすれ違いが生まれてしまうんですよね。マクシムはマリー=アンヌのためを思って頑張っているのですが。

革命の象徴である“彼”を殺さなくてはならないというマリー=アンヌの考えは、いつしか、愛した人の暴走を止めるために、私が『彼を殺さなくてはならない』という見解に変わっていきます。
恨みというよりは、愛ゆえに。

最後の牢獄のシーンで、マリー=アンヌとマクシムが本心を語り、心を通じ合わせたところでは、ようやく結ばれた二人に心が熱くなりました。

マクシムに背中を押されたマリー=アンヌは、これから一人で生きていかなければならないんですね。辛すぎる…。

・ ジョルジュ・ジャック・ダントン(彩風咲奈)

豪快!男前!

この作品の中では、マクシムが彼の手を取れなかったことで、革命が潰えていく様が描かれていきます。

『イギリスにはお金を渡したら、きっと大丈夫だ!』
そうやって勢いで単独行動してしまうところ、嫌いじゃありません。
というか、終始憎めない役どころ。

彩風さんは『悪・即・斬』のイメージが強かったのですが、見事に上書きされました。歌も良かったし、演技に魅了されました。

デムーランからの手紙を受け取り、すぐにマクシムを救うべくパリへ帰ってくるところなんか、格好良すぎて涙出ます。
奥さん大好きなところも素敵。

また、処刑直前にロベスピエールに向けて「次はお前の番だ」と言い残したのは有名な逸話ですが、この舞台では『先に行って待ってるぞ、マクシム』的な台詞に置きかえられていて、最後まで頼れる兄貴分には感動させられっぱなしでした。

カミーユ・デムーラン(沙央くらま)

コマさん退団公演だったのですね…。
男女役、どちらも好きでした。

1789でダントンを演じられていたこともあり、今回はどのように役作りされているのだろう?と楽しみにしていました。

マリー=アンヌとともに、友人であるマクシムを救うべく、奮闘し続けるデムーラン。
優しい人柄が観客には伝わってくるだけに、マクシムと相容れない様子が見ていて辛いです。

ダントンほどの派手さはありませんが、舞台に出るだけで不思議と安心できます。
ダントンじゃないとマクシムを止められない! と言っていましたが、ちょっぴりあやういマクシムと破天荒なダントンの間には、あなたがいたからこそいいバランスが保てていたんだと思いますよ。

ありがとうデムーラン。
お疲れ様でした、沙央さん。

タレーラン役の夏美ようさんや、ロラン夫人の彩凪翔さん(女性役すると思ってなかった!)は、影で暗躍する役であるため出番こそ少ないものの、安定の演技力で魅せてもらいました。

ギロチン台で凛と佇むロラン夫人は、すごく良かったです。憎々しげな表情が、また味があって…!

ところでギロチン台といえば、今回は舞台の背景やキャスト陣の衣装に、ギロチンを彷彿とさせる斜め線(『/』のような線)が入っていました。
また、ギロチンが落とされるたびに、血をイメージするような映像が背景に浮かび上がったりします。

明るく談笑している場面であっても、そのギロチンがちらっと目に入ると、時代の暗さというか、革命の裏側で人が殺められているという事実が私たちに突きつけられているようで、効果的な演出だったなーと思います。

そして最後に。外せないあーささん!
美しい月城かなとさん(あの人のスタイルの良さは異常だと思う。褒め言葉!)とトレードで組替えとなった朝美絢さんは、今回ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト役をされていました。

マクシムに心酔し、生涯彼を支え続ける『花のサン・ジュスト君』。

革命の大天使と呼ばれる彼ですが、マクシムを崇拝するあまり、彼を神格化し、次々と反革命分子を処刑していきます。

サン=ジュストの『栄光へと導く救世主が必要なのです』という語りかけから、マクシムが『私が革命を守る!』と宣言するまでの流れは、後押ししたというよりも、まるで洗脳のようでした。でも、美しいから許されてしまう。なんて怖いサン=ジュスト君。

マクシムと同じ理想を追い求め、人を殺め続ける姿は狂気じみていますが、マリー=アンヌに対して嫉妬のような表情を浮かべたり、生きがいをなくし立ち尽くすマクシムを見て戸惑うサン=ジュスト君の姿はとても人間らしく、ただただ純粋な青年の姿を垣間見ることもできました。

彼がいなければ、この舞台は成り立っていなかった。今後が楽しみです!

雪組は、次もパリが舞台の『凱旋門』。和物じゃないんですね。

柴田先生の脚本で再演ということなので、倍率が高かったりするのでしょうか。

また、かつてこの作品で主演をし、文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞した轟悠さんが専科として舞台に立たれることも、見どころの一つですね。
追加情報を楽しみにしています!

*もうひとこと*
東宝1789、私は小池徹平×神田沙也加×凰稀かなめ加藤和樹×夢咲ねね×花總まりの組み合わせで観に行きました。
今年はどの組み合わせで行こうか、まだ迷っています。
もちろん宝塚版も観ましたよ!

『1789―バスティーユの恋人たち―』月組宝塚大劇場公演ライブCD

みやるりのアルトワ伯にどハマりしましたね。
1789については、また語りたいと思います。