ムラのある街を飛び出して

関西で生まれ育った私が,東京暮らしを始める話。観劇記録が多めです。

ポーの一族(花組)感想

2018-01-03 15時公演
@ 宝塚大劇場

あけましておめでとうございます。
今年もちまちまと演劇記録をつけていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

年末年始で関西に帰省することができたので、諦めかけていた宝塚のお正月公演を観てきました。

演目は『ポーの一族』。
ミュージカル・ゴシックです!

ミュージカル・ゴシックといえば、月組『薔薇の封印 -ヴァンパイア・レクイエム-』を思い出す人が多いのではないでしょうか。

薔薇の封印は『ポーの一族』のオマージュと言われており、薔薇の谷の設定などは、原作者である萩尾望都先生の許可を得ていると公式に記載されています。

薔薇の封印は私も大好きな演目で、何度もDVDを観ています。

ポーは永遠の少年という形で描かれていきますが、薔薇の封印に出てくるフランシス(紫吹淳)とミハイル(彩輝直)は、青年の容姿を保ちながら色々な時代を旅していきます。
修道僧や亡命貴族、ダンサーに錬金術師と、年代が変わるたびに魅力的な装いで登場してくるトップスター達は圧巻です。
紫吹さんの退団公演ということで、一本ものであるにも関わらず、ダンスが大量に盛り込まれているのも見どころですね。

私は彩輝さんを追いかけていたので、『荒ぶる魂』をエンドレスリピートしてました。観終わった後に、頭の中でエバーライフ!と回るのは、きっと私だけじゃないはず。

荒ぶる魂

荒ぶる魂

たしかDVDは生産終了していたかと思いますが、ポーを観て楽しかった! という人は、スカイステージでもたまにやっているみたいですし、こちらの作品もオススメです。小池先生の『バンパネラの世界を舞台上で表現したい!』という熱い想いが伝わってきますよ。

前知識はその程度で、実は『ポーの一族』に関しては、原作を数話読んだことがある程度でした。
ですので、あくまで“宝塚歌劇”による『ポーの一族』の感想のみを記載させていただきます。


まず劇場に入ると、オケ隊の生演奏が出迎えてくれました。これを聴くと、新年を迎えたんだなーという気持ちになります。

宝塚大劇場では、三が日の開場時に、歌劇のオーケストラピックアップメンバーによるロビー・ウェルカム演奏が楽しめます。

私が聴いた曲目は、
・世界の王(ロミオとジュリエット
・金色の砂漠(金色の砂漠)
・炎の中へ(THE SCARLET PIMPERNEL)
・闇が広がる(エリザベート
ランベス・ウォーク(ME AND MY GIRL)

だったかと。

みりおさんが出演された演目で揃えていたみたいです。

一緒に行った叔母が「オケが『ひとかけらの勇気』やってたね〜!」と嬉しそうに話していたので、もしかしたらスカピンの楽曲はそちらだったかもしれません。記憶が曖昧です。

仕方ない。その後に観た舞台の印象が! 強すぎて! 吹っ飛んでったんですよ!(言い訳)


あらすじはだいたいこんな感じ↓

1964年、西ドイツのフランクフルト空港にバンパネラ研究家が集まった。

100年以上にわたって語り継がれてきたバンパネラ伝説が、ドン・マーシャル、バイク・ブラウン4世、マルグリット・ヘッセン達によって明かされてゆく。


イギリスの片田舎、スコッティの村で囁かれ続けてきた噂話。
崖の上の館に暮らすポーツネルの一族は、時を止め、生き続けるバンパネラらしい。

そのポーツネルの館で育てられていたのが、幼いころにスコッティの村近くの森に置き去りにされた、エドガーと妹のメリーベル。

エドガーは、ポーツネル一族に関する噂を信じていなかったが、館の秘密の広間にて行われた婚約式をのぞき見た際に、彼らが永遠の命を持つバンパネラ、“ポーの一族”であることを知ってしまう。

一族の正体を知ったエドガーは、愛する妹メリーベルを守るため、運命を受け入れ、“ポーの一族”に加わることになる。

終わりなき時を生きる運命を背負ったエドガーは、時を超え場所を変えて、生き続けていく。

そして舞台は1879年に。
エドガーは義理の両親であるポーツネル男爵夫妻と、“ポーの一族”として生きる道を選んだメリーベルとともに、新興の港町ブラックプールを訪れる。

そこで出会ったのは、町で最も強い力を持つトワイライト家の跡取り息子、アラン・トワイライトだった。

望まずに過酷な運命を強いられたエドガーと、生まれながらにして定められた人生を歩まなければならないという苦悩を抱えたアラン。
心を閉ざし、孤独に生きる二人は、次第に惹かれ合っていく。

エドガーがアランを仲間にしたいと目論む一方で、ポーツネル男爵夫妻は、ホテル・ブラックプールで診療所を開くジャン・クリフォードとその婚約者ジェインを一族に加える算段を立てる。

大老ポーはそんな男爵の選択を認めつつ、『海辺の小屋には近づかないように』と忠告を残すのだった。

一方、霊能力者のマダム・ブラヴァツキーは大老ポーの魂に触れ、クリフォードとその友人バイク・ブラウンに銀の弾を手渡し、いずれその銃弾が必要となることを告げる。

そして男爵夫妻は、クリフォードを仲間に引き入れるべく行動を起こすのであった。


以下、ネタバレ注意






何百年にも渡るエドガーの旅をどのように描いていくのかと思っていましたが、バンパネラ研究家に語らせるという形で、エドガーの幼少期から順を追って物語が進んでいきました。

幼いエドガーが赤ん坊のメリーベルとともに森に置き去りにされた1744年から、マルグリット・ヘッセンの甥(グレンスミスの玄孫)ルイス・バードの通うガブリエル・スイス高等学校にイギリスからの転校生としてアランとエドガーが現れる1959年までが、足跡として語られていきます。

この作品のミュージカル化が悲願であった小池修一郎先生が脚本・演出を担当されていますが、70人を超える出演者の一人ひとりに原作の雰囲気を崩さぬよう役が与えられており、物語も細かく練られています。
イケコの30数年の想いが詰まった集大成といっても過言ではないと思います。

原作未読としては、追いかけなければ展開に置いていかれそうで必死でしたが、原作に対する愛がひしひしと伝わってきました。

ベルばらもそうですが、最近の宝塚は原作を知っていればいるほど、舞台を楽しめるような細かいネタが放り込まれている気がします。

今回は萩尾望都先生が作詞協力をしていたり、漫画の名場面が台詞そのまま引用されていたりするので、原作ファンは「こんな細かいところまで舞台で再現してくれるの?!」と感じられるかもしれませんね。

メインキャストは以下の通り。

エドガー・ポーツネル:明日海りお
シーラ・ポーツネル男爵夫人:仙名彩世
アラン・トワイライト:柚香光
大老ポー:一樹千尋
カスター先生:飛鳥裕
老ハンナ:高翔みず希
レイチェル:花野じゅりあ
フランク・ポーツネル男爵:瀬戸かずや
ジャン・クリフォード:鳳月杏
バイク・ブラウン/バイク・ブラウン4世:水美舞斗
リーベル:華優希

明日海さん扮するエドガーは、少年の姿を保つバンパネラ
最初から最後まで、トップスターが少年を演じるという挑戦役です。

幕が開くと、そこいたのは神秘的な雰囲気をまとう、まさに本の中から抜け出てきたようなエドガーの姿!

もう一度言うと、私は原作をきちんと読んだことがありません。
それでもその空気感には思わず息を呑みました。アランだけでなく、観客みんながエドガーに気圧されたはず。

今回明日海さんは、楽曲をそつなく歌いこなすというより、エドガーの葛藤や苦悩を歌声にのせて表現されていました。
容姿の変わらない役柄でありながら、複雑な心情を抱える少年を、魅力たっぷりに体現されているのが素晴らしい。

小池先生の『エドガーはいた』という言葉に、全て込められていると思います。
最初から最後まで美しかったです!

そしてトップ娘役・仙名さんのシーラ。
キャスティング発表まで、エドガーの最愛の妹・メリーベルを演じると信じて疑いませんでした。

小池先生には1789、All for Oneに引き続き今回も驚かせてもらいました。

宝塚の公式HPには、シーラに対してエドガーは憧れを抱いていると書かれていたので、叶わぬ恋心が軸になるのかと思いきや、そんなことは全くありません。

むしろ、作中ではシーラとフランクの純愛がとても丁寧に表現されていきます。

そんなシーラさん、一族に加わるまでの紆余曲折をさらっと語り流します。
苦労しても純粋さを失わない、ひたむきな姿には好感が持てました。それにしても、フランクとの最期は美しすぎて、本当に切ないです…。

そしてアラン役の柚香さん。
男性役でありながら、エドガーの相手役(といっても過言ではない)を務めます。

軽くあらすじは知っていたので、シーラさんが「永遠の時を生きるからこそ、愛が必要なのよ」とエドガーに説くシーンでは、いやいや彼が選ぶのは男性ですよ!と言いたくなったのですが、この作品に性など関係ありませんでした。

エドガーとアランは、二人にしか分からない絆で結ばれていて、そこには私たち観客たちにも踏み込めない世界が広がっていました。

個人的には、歌詞がはっきり聞こえていれば、もう少し感情移入ができたかな?と思います。

私が観た回は、ピンマイクの調子が良くなかったのか、第一幕は結構な出演者の声がこもって聞こえました。
残念でしたが、都度改善されますので今後は大丈夫かと。

舞台の大半でバンパネラを演じる明日海さんと違って、アランは終盤まで人間。人生を悟りながらも、少年らしい演技を保ったまま突っ走っていってほしいです!

リーベル役の華さんは終始可愛らしい!
10代の少年たちが、次々と惚れていく気持ちもよく分かる。

十字架に恐れおののくメリーベルに対し、エドガーは「あいつは弱すぎた」と漏らしますが、エドガーも讃美歌に驚いて逃げ出したりしています。

二人ともバンパネラとして長い時を過ごしていますが、どこか弱い一面を持ち合わせているのは、成人して一族入りを果たしたシーラとは違い、人格形成がまだ完全ではない幼い時分に一族へ加わったためでしょうか。

リーベルを守るためにバンパネラになったエドガーが、最愛の妹を救うことができなかったところは、本当に悲しいですし、なんならメリーベルを撃ったクリフォードが憎くなります。

そんなクリフォード役の鳳月さんは、表面的には好青年を装いながらも、裏で色々な女性に手を出す好色を演じ分けます。
ひどい役回り。しかしそのクリフォードさんを慕い続けるジェインが、また一途で良い。

しかし、女性たちを魅了してやまない“抜群なビジュアル”とは。
クリフォードに関しては、外見のみで一族入りが決定したのではないかと疑ってしまいます。笑

最後に、シーラの相手を務めるフランク。
すらりとした瀬戸さんは、ダンディーな男爵役をスマートにこなします。
スーツとか燕尾服とか、抜群に似合うんだよな、あきらさん…。

二番手だった芹香さんの組み替えもありましたし、今後花組での瀬戸さんの活躍を期待していきたいです!

*もうひとこと*
薔薇の封印では、過去から現代に至るまでに、フランシスとミハイルがパリやベルリンを訪れます。

ジプシーダンサーに扮したフランシスが、1666年にサンジェルマン宮殿で国王ルイ14世にダンス指導をするシーンがあるのですが、All for Oneを観た時もこの作品を思い出して、少し面白かったです。

人生を変えた作品② LUNA-月の伝言-

LUNA 月の伝言 BLUE・MOON・BLUE [VHS]

LUNA 月の伝言 BLUE・MOON・BLUE [VHS]

宝塚に通い始めるきっかけとなった作品。
タイトルからも分かるように、月組の舞台です。

それまでも、何度か宝塚を観たことはあったのですが、強烈に記憶に残っているのがこの演目です。

まだ小学生だった私は、親に連れられ、宝塚大劇場でこの舞台を観ました。パンフレットが欲しいとねだったのは、この時が初めてだったと思います。

メインキャストは以下の通り。

ALEX/月読:真琴つばさ
アイリーン:檀れい
ブライアン:紫吹淳
ウラノス:立ともみ
ポーラ:夏河ゆら
マッコイ:真山葉瑠
ハリー:初風緑
ドクトル:嘉月絵理
ジュード:汐美真帆
イレーネ:千紘れいか
ジョー:大空祐飛
ビル:霧矢大夢
ピート:大和悠河

ジョー・ビル・ピートの3人は『ザ・マーキュリーズ』というグループ名でアイドル活動をしているのですが、全員が後のトップスター。今から考えると、なんて豪華なキャスティング!

衣装やキックボードに時代を感じますが、それが当時の最先端だったんでしょうね。
インターネットを用いての音楽配信を行うという話題には、『まさかCDがなくなることはないだろ〜』と思いながら観ていたので、今となってはさすが小池先生だなぁと。配信限定の楽曲が、当たり前のように発売される時代になりましたもんね。

あらすじはだいたいこんな感じ↓

2000年。イングランドの孤島で巨大遺跡《ルナ・パレス》が発見され、世界の注目を集めていた。

メディア界の寵児であるブライアン・キースは遺跡を購入し、島の伝統である《月の王子の為の巫女選び》をイベント化した《ミス・ルナ・コンテスト》を企画。考古学者のアイリーンやハリーらの反対を無視し、審査員に人気歌手ALEXを招く。

発掘現場でネックレスを拾ったALEXは、それをアイリーンに贈ろうとするが、発掘品が勝手に持ち出されることに怒ったアイリーンは皆の前から走り去ってしまう。

その後、夜の遺跡で月笛を吹くアイリーンを見つけたALEXは、語り合ううちに彼女に惹かれていく。そしてアイリーンも、ALEXの苦悩や本心を知り、好意を抱き始めるが、彼の強引な姿勢に戸惑ってその場から逃げ出してしまう。

一方、ブライアンは密かに遺跡の地下に施設を造り、秘密のセミナーを開いていた。彼の本当の目的は、天才の血液から遺伝子を採取し、別の天才を作り出す為の《ジーニアス・プロジェクト》を実行することだった。

そんな企てを知らないALEX達は、偶然地下施設内の謎の玄室に迷い込み、そこで古代のオーパーツである石板、月笛、小刀を発見する。

石板には、島に残る伝説の歌《シュラルー》を月笛で吹くと、1万年以上前に存在していた伝説の月読宮が現れると記されていた。
ALEXは、小刀で誤って指先を切ってしまうが、心配するアイリーンをなだめ、石板に従って月笛を吹いてみる。

すると、月笛の音と共に轟音が響き、美しい月読宮が現れる。アイリーン達の目の前で描かれる、古の世界での恋物語。しかし、月読宮の破滅が目前となり、アイリーンは月読宮の世界を封印すべく、再び月笛を吹いた。

元の世界に戻ってきたALEX達。しかし、オーパーツで傷を負ったALEXは、指先の傷口から月の王子《月読尊》の遺伝子を取り込んでしまい、太陽が出ている間はALEX、夜を迎えると月の王子“月読”としての意識を持って生活することになってしまう。

月読の遺伝子を得たALEXの、超人的な能力を目の当たりにしたブライアンは、彼の遺伝子を採取しようと画策し、囮とすべくアイリーンを誘拐する。
そして、満月の夜を迎えるのだった。

当時は組の違いも理解していませんでしたし、トップスターが誰かも知らなかったのですが、最後まで楽しみながら観ることができました。

ウラノスの地下セミナーで、エクササイズをしながらスペシャル・セミナー』という曲を歌う場面では、しきりに「フー!フー!」という掛け声が入ったりして面白いのですが、これは宝塚作品。ジュードがセミナーの途中で「君のカルマが消えてゆく…」と漏らすところは本当に格好良いので、油断しながら聞いていたら、低いささやき声にドキッとさせられます。

スペシャル・セミナー

スペシャル・セミナー

LUNAはファンタジーでありながらSFチックで、不思議な現代物。
パンフレットには鏡リュウジさんの心理占星術の話や、オーパーツの解説ページが設けられるなど、独特な世界観が展開されています。

一本物ではないのに、よくここまで内容を詰められたなぁと感心します。私はこの作品からイケコワールドにどハマりしましたが、姉も『薔薇の封印』から小池作品が大好きになりました。やっぱり姉妹ですね。笑

ちなみに、この作品は公演ビデオが発売された後に、復刻版としてDVDで再登場しましたが、現在はどちらも廃盤になっています。
スカイステージで放送されることもありますが、たまに中古品が出回っているので、気になる方はこまめにチェックを!

DVDには『ショー・イリュージョン BLUE・MOON・BLUE-月明かりの赤い花-』も収録されています。
メインソングとなる『ENDLESS DREAM』THE ALFEE高見沢俊彦さんが作詞作曲、そして編曲をされている大迫力の一曲なので、こちらもオススメです。

*もうひとこと*
私はもともとパンフレットとVHSを持っていたのですが、のちに出た復刻版DVDを購入してみると、ケースの中には本編が収録されたDVDとともにミニサイズの公演パンフレットが収納されていました。

宝塚歌劇90周年記念 復刻版DVD『LUNA』『BLUE・MOON・BLUE』-月明かりの赤い花- 舞台パンフレット LUNA ブルー・ムーン・ブルー 月組 2000年宝塚大劇場公演 真琴つばさ 紫吹淳 檀れい 大和悠河 大空祐飛 霧矢大夢

内容量も充実していますし、なにより手のひらサイズのパンフレットが可愛い! 90周年記念のDVDなので、特別に入っていたのかもしれませんね。

人生を変えた作品① エリザベート(ウィーン版)

私が初めてエリザベートを観たのは、2002年に花組が演じた舞台でした。

宝塚好きの叔母に勧められて行ったのですが、華やかな衣装と美しい登場人物たちに魅せられて、見事にハマりました。
元々追いかけていた彩輝直(現在は彩輝なお)さんや明日海りおさんがトートを演じていたこともあり、その後も宝塚や東宝の公演に足を運ぶことになります。

その中でも、私が一番衝撃を受けたのは、2007年に観たウィーン版キャストの来日公演でした。

この時はあいにく2階席だったのですが、舞台両脇のスクリーンに随時日本語字幕が表示される形式だったので、ステージから離れた席で良かったのかもしれません(ちなみに、前から7列目でCHICAGOを観た時は、少し字幕が見辛いように感じました)。

まず驚いたのが舞台装置の数々
宝塚でもせりやまわり舞台はありますが、八百屋舞台(傾斜のついたステージ)が波打ったり回転したり、エリザベート殺害の凶器であるヤスリを模した跳ね橋が、キャストを乗せたまま上下するのを見た時は、こんな大掛かりな演出方法があるのかと思ったものです。

宝塚版・東宝版しか見たことがない人は、ウィーン版を見ると、また違った印象を覚えるのではないでしょうか。
ちなみにウィーン版のDVDは日本語字幕付きのものがあるので、私のようにドイツ語が分からない人でも、ちゃんと楽しめます。

カフェハウスのシーンでテーブルセットがくるくる動いたり、チェス盤を模ったセットの中で、キャスト陣がチェス駒になって動く演出は奇抜で、発想がすごいなぁと思います。

そもそも、演じているのが日本人じゃないというだけでも、だいぶ作品が違って見えますよね。歴史上の人物が、舞台上で本当に生き返ったようで。
第一幕終盤で、マヤ・ハクフォートさん演じるエリザベートが静かに佇んでいるシーンは、有名な肖像画がそのまま舞台に現れたのかと思うほど美しくて、目が離せなくなりました。

そしてなによりも、圧倒的な歌唱力
あまりの迫力に、鳥肌が立ちっぱなしだったことを覚えています。
まあ正直、キャストが歌い始めたら字幕そっちのけで見入っちゃいましたね!

実はその日、トート役をされていたマテ・カマラスさんのサイン色紙を引き当てたりして、終始テンション上がりまくりでした。

その後はウィーン版のCDとDVD買って、エンドレスリピートです。

あまりに好きすぎて、ウィーンへ飛んでエリザベートゆかりの地を巡ったり、本場でミュージカルを観ることになるのは、そこから数年後のお話。

そろそろ、ウィーン版の再来日を期待してます!

*もうひとこと*
日本語字幕つきのDVD、私はキャトルレーヴで購入しました。
CDは色々出ていますが、私が持っているのは、こちらのCD↓

Ocr: Elisabeth-Das Musical

Ocr: Elisabeth-Das Musical

  • アーティスト:Various
  • Hit Squad
Amazon
エリザベート・トート・ルドルフが来日公演と同じキャストです。
来日公演を観た人にはもちろん、海外のエリザベートってどんな感じだろう?という人にもオススメ!

髑髏城の七人 Season風(千秋楽)感想

2017-11-04 ソワレ
@ IHI STAGE AROUND TOKYO

東京への引越しが決まり、まず最初に押さえたのが劇団☆新感線の髑髏城《風》のチケット。

関西勢の私は半ば諦めていたのですが、松ケンの生足と美麗な向井理が見たい!ということで慌ててチケット購入(不純な動機)。

幸いなことに、千秋楽を鑑賞することができました。髑髏城を生で観るのは、小栗旬主演のワカドクロぶりです!

『髑髏城の七人』DVD
* 2011年上演の『髑髏城の七人』は、それまで一人二役で演じられていた捨之介と天魔王が、それぞれ独立した役として描かれるという新たな変化を加え、さらに若いキャストで構成されたことから、通称『ワカドクロ』と呼ばれています。

あらすじはだいたいこんな感じ↓

時は天正十八年。
天下統一の志半ばに倒れた織田信長の跡を継ぎ、国を統治しようとする豊臣秀吉の前に、一人の男“天魔王”が立ちはだかる。天魔王は武装集団《関東髑髏党》を束ね、漆黒の髑髏城を構えて関東を支配していた。

関東髑髏党に追われていた少女、沙霧を助けた捨之介は、偶然知り合った狸穴二郎衛門とともに、関東一の色里《無界の里》を訪れる。
無界一の人気を誇る極楽太夫や野武士集団《関八州荒武者隊》の頭目・兵庫、捨之介とは旧知の無界屋蘭兵衛など、奇妙な縁に操られ、関東に集まる者たち。

総勢二十万の兵による、秀吉の関東征伐が今にも始まらんとするとき、関東平野に相まみえた蘭兵衛と捨之助、そして天魔王。

蘭兵衛と捨之助が抱える過去とは?
天魔王との因縁とは?

いま、天魔王の悪しき野望が明らかになろうとしていた。


以下、ネタバレ注意







まず、なによりも
劇場がすごい!

《風》特有の演出なのか、観劇中に何度も風を感じて、興奮しっぱなしでした。

後方の席だったので、ステージアラウンド特有の客席の動きも感じることができて、ちょっとしたアトラクション感覚。

そして今回は、久しぶりの捨之介・天魔王の一人二役バージョンということでしたが、それ以外のキャストも二面性を演じ分けているのがよく伝わってきて感動しました!

・捨之介(松山ケンイチ
松山捨之介は女好きや気さくな一面よりも、人間臭い演技に驚きました。そんなに泣く?!と思ったのですが、本能寺の変を防ぐことができなかった捨之介にとって、敵であれ味方であれ、人の命はそれほど重みのあるものなんだなぁと。

信長が全てだったと語る彼が、蘭兵衛に対して「俺たちは殿がいなくなって自由になったんだ!」と叫ぶ場面では、歴代の捨之介とは違い、信長の重圧をストレートに表現していて、彼に対するイメージががらりと変わりました。
何作品か髑髏城を観てきて、私の中では、天魔王が恍惚と「殿の悪逆っぷりはすばらしかった…」とつぶやき、捨之介は「あの頃は、殿が全てだったよな」と郷愁を込めて語る印象があったので、改めて捨之介の中での“信長”の存在の大きさに気づかされたというか。

なんにせよ、ラストシーンでは沙霧たちに救われて、過去のしがらみを取っ払うことができた捨之介。
「新しい名前を探しに行く」と言って舞台を後にし、再び現れたカーテンコールで「あーばよっ!」と軽やかにはけていった時は、ああ、捨之介の旅はここからなんだ…と泣きそうになりました。

瓢箪使い最高でした。本当にお疲れ様です。

・天魔王(松山ケンイチ
正直、仮面を取るまでは「バァット…」「イグザクトリー!」が頭を回っていたのですが(鳥天魔のなごり)、松山天魔王が現れてからはその迫力に圧倒されました。
えっ、これ信長様?と目を瞬く私。話し方といい容姿といい、捨之介と全然違う!

戦国武将らしい口調がツボで、蘭兵衛から勝算はあるのかと問われた時には「儂にも分からんのじゃ」とか笑顔でさらっと言えちゃうところがかわいい、天魔王様。

正直、私は捨之介より天魔王の演技の方が好きだったな〜。
できれば松ケンで天魔の舞が見たかった。《月》での復活を期待しています!

・沙霧(岸井ゆきの
出てきた時は子役?とか思ったのですが、飛んで走って大暴れ! 小さくても存在感は抜群。
画面越しでしか見たことがなかったので、岸井さんの舞台演技が上手で驚きました。

信長の影をしていた捨之介とは逆で、自分の影を犠牲にすることで、髑髏党から逃れることのできた沙霧さん。
小さい体で背負ってきたものがたくさんあるからこそ、沙霧は捨之介を助けることができたんだろうなぁ。

髑髏城で捨之介とハグしてる時の沙霧は、本当に嬉しそうだった。
よおっし!赤針斎、城、建てる! じゃなくて、早く捨之介のお嫁さんになればいいと思います。二人ともお幸せに!

・無界屋蘭兵衛(向井理
向井屋さん顔ちっちゃ!が第一印象。
じゅんさんが自分と比較していましたが、舞台の中でも際立って小さかった。

信長協奏曲を見てから、彼の和装が大好きになった私は、つい蘭兵衛の姿を追ってしまっていました。
まさか二度も接吻するとは…。

天魔王の手を取る前から、容赦無く東雲を殺めるシーンがありますが、その直後の捨之介とのやりとりでは蘭兵衛の危うさが描かれており、彼のこれからの姿が透けて見えたようで背筋がヒヤッとしました。
天魔王はあくまで道を踏み外すきっかけにすぎず、向井屋さんは遅かれ早かれ同じ道を選んでいたのかもしれないですね。
“天魔王の掌の上で踊らされて、無界の里を襲いに行く”のではなく、自ら天魔王を引き連れて家康討伐へ向かったところも、夢見酒のせいというよりは、蘭兵衛自身が過去と決別しようとしていたわけだし。

「無界の里で誰が救われたんだ」という台詞では、本心が見えたようで切なかったです。信長が死んでから月日が経っていても、自分を許すことができていない事実を、今までこんな言葉で吐露したことってありましたっけ?

でも、太夫たちは蘭兵衛がいたからこそ新しい生き方を手に入れることができたわけで。そろそろ『蘭兵衛は自分を許して、自分のために生きていく。彼のそばにはりんどうが…』って結末の髑髏城が観たいですね。無理でしょうけども。

公演前のインタビューでは、殺陣の封印宣言をして話題になっていたようですが、私としてはもっと和装姿が見たいので、今回の経験を足がかりにドラマや舞台でどんどん殺陣を磨いていってほしいです。

・極楽太夫田中麗奈
綺麗、というよりはかわいらしかった極楽太夫。蘭兵衛にぴったり寄り添う太夫。兵庫さん、完敗だよ!と思いながら二人を見つめていました。

寄り添っている時の、向井屋さんのどこか冷めた目とは対照的な、田中太夫の優しげな瞳が印象的。

傷を隠し、誇りを持って生き続ける姿はとても美しかったです。

・贋鉄斎(橋本じゅん
「今の名前はL、だったかな?」
って、しょっぱなから絶好調なじゅんじゅん!
男性好きとか蕎麦打ちとか、独自設定がありすぎて笑いが止まりませんでした。
出てくるだけで一気に安心して観れるようになる。本当じゅんさんすごい。

100人斬りのところで、蕎麦の屋台が出てくると思わなかったので、真面目なシーンなのに面白くて仕方がなかったです。

最近はドラマ出演も常連になっていますが、やっぱり新感線で見るじゅんさんが一番好き(アドリブ含め)。次の舞台を楽しみにしています!

・兵庫(山内圭哉
蛮幽鬼のような悪役出演ではなく、正義の味方として拳を振るっていた山内兵庫。でもごめんなさい。登場した時は髑髏党の手下その1だと思いました! だって服装が!!笑

格好良くて憎めない兵庫役は、山内さんにぴったり。
ちょろ毛が気になっていましたが、まさかの猫じゃらし設定! そしていまだかつてない、素晴らしい鎌使い。
「見ていてロックンロール」
しっかりと目に焼きつけました!

・狸穴二郎衛門(生瀬勝久
超楽しみでした。生瀬二郎衛門!
おにぎり食うわ、呪いぶちまけるわ、ほんと存在感大きかった〜。

序盤から裏があることを匂わせていましたが、正体を明かしてからは一気に渋さが増して素敵…。
そらおエマさんも若返りますよ!

おえまといえば、里の外で死ぬという伏線が手鏡に隠されているとは思いませんでした。
贈り物?生瀬さんスッテキー!くらいにしか感じていなかった。鏡を見て、愛した女を想う家康を見るのは辛かった…。

ラストシーンの家康様は貫禄たっぷりで、これなら江戸時代は安泰やで〜と納得して舞台を見守ることができました。

それにしても、煎餅まきでの「狸穴二郎衛門を演じました、徳川家康です」って自己紹介。どこまで客を笑かすつもりだ! ほんと楽しかったです。ありがとうございました!

三五と磯平は安定の名演技でしたね。たぬきコスのネタはんんん…と思っていたのですが、まさかあんなにたぬき(着ぐるみ+パペット)が活躍するとは!
磯平のマイケルジャクソンネタは『レッツゴー!忍法帖』の阿部サダを彷彿とさせました。鳥で客演していたから、ポー!を持ってきたのかな?

あと、瞬尾の演技。
松山天魔王が口封じのために彼女を殺めるシーンで、自ら身を差し出すところなんか、よし子姐さん格好良い…!

残念だったのは、天魔王の顔出し出演が少なかったこと。
最初の顔見せや敦盛が削られたことで、一人二役設定があまり生きていないというか。
第一幕が二郎衛門さんの登場から始まるのは、自然な形で分かりやすかったのですが、いつ松山天魔王が出てくるの?とモヤモヤしながら展開を見守っていたので、もう少し早く見せ場があっても良かったのにな〜と思ったり。

そして、天魔王が髑髏党の面々と舞台に立つ場面が少なかったのも、少し気になりました。
瞬尾との関係性や、“瞬尾と蘭兵衛さえ消すことができれば”という設定が今までよりも分かりやすくなったのですが、髑髏党の手下たちがどうして天魔王に付いていくのか不思議に思いました。仮面をつけた状態でいいので、天魔王のカリスマ性を党員の前で披露してほしかった…!

長々と書きましたが、《風》は原点回帰の二人一役でありながら、全く新しい髑髏城になっていて、初見でもそうでなくても楽しめる作品です。ライブビューイング見に行けなかったので、ゲキシネになったら再登城しようかな。

そして、もうすぐ《月》が始まりますが、私は年明けの上弦チケットを押さえているので、しばらく新感線はお預けです。
下弦はチケ取れなさそうだし、ライブビューイング情報を心待ちにしています〜!

*もうひとこと*
ちなみに、私はワカドクロのスペシャルエディションの方を持っています。

個人的には、特典映像のメイキングムービーの中で、キャスト陣が公演中も役作りに悩み、そして最高の舞台を作るべく、最後まで新境地の開拓に挑み続けたと語るところに驚きました。舞台を観た当時は、大迫力に圧倒されたというのに、あの時はまだ成長途中だったなんて。千秋楽が観たかった!!

ごあいさつ

はじめまして、こんにちは。
しま子と申します。

30年近く梅芸や宝塚に通っていた私が、夫の異動で東京に引っ越しました。

急な辞令だったので、関西で観るつもりにしていた『危険な関係』『レディ・ベス』そして宝塚(ロベスピエールとポー)は涙をのんで諦めることに…。

ただ、ここは東京。
関西では観ることのできない舞台もたくさんあります!

せっかくなので、この機会に観劇日記を始めることにしました。演劇好きの方も、そうでない方も、これからよろしくお願いいたします。

 

 

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