ムラのある街を飛び出して

関西で生まれ育った私が,東京暮らしを始める話。観劇記録が多めです。

人生を変えた作品③ SHINKANSEN☆RX 『薔薇とサムライ ~Goemon Rock Over Drive~』そのいち

今、語らずしていつ語る。
私の新感線はここから始まった…

というわけで

1. 新感線を初めて観に行くまでの話
2. 初代薔薇サムを含む五右衛門ロックシリーズの概要や、そもそも「RXってなんぞ?」という話
3. 初代薔薇サムのあらすじと感想

を三回に分けて書いていきたいと思います。

2022年劇団☆新感線42周年興行秋公演 SHINKANSEN☆RX 『薔薇とサムライ2 - 海賊女王の帰還 -』は、すでに三都市での公演を終え、残すは東京のみとなっています。

薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-|劇団新感線

私は12月に観に行くので、薔薇サム2のネタバレは踏まないよう、日々気をつけています。

初代薔薇サムの話を書く前に、まずは新感線との出会いの話から(といいつつ、初めは演劇集団キャラメルボックスの話です)。

私は小中高と演劇部に所属していたのですが、当時関西圏の高校演劇部員には、定期的にキャラメルボックスの公演へ招待していただく機会がありました。

自由に扱えるお金などほとんど持っていなかったあの頃、プロの演技を間近に見ることのできる機会は本当に貴重で、顧問に連れられ、みんなでスキップしながら劇場へ向かったものです。

運命の出会いは2007年でした。
演目名は『まつさおな』

席につき、パンフレットに目を通すと、そこには“客演 劇団☆新感線〜”の文字が。

もちろん当時から新感線は有名な劇団でしたが、なにせ無知でしたので、隣に座る親友と共に「劇団名に星のついてる人がいる!」と笑い合っていました。

しかし、幕が開いて驚きます。

はっきりとした発声。自然な所作。主役ではないにも関わらず、演技の端々で確かな存在感を見せつけ、観客を引き込んでいました。
公演が終わり、思わず親友と顔を見合わせます。

「「めっっっっっちゃ、あの人上手かったね!!!」」

その方は、新感線の劇団員である粟根まことさんでした。

帰り道の電車内で、私たちは新感線のチラシを手に、途方に暮れていました。

あの人が所属する劇団の舞台を観てみたい。

しかし、1万を超える高価なチケットに手が届くはずもなく、自分でお金を稼げるようになるまで我慢だね、と話していました。

時は流れ、アルバイトを始め、だんだんとお金が貯まってきたころに、映画館で新感線を観てみないか?とお誘いがかかります。

「実は、映画館で舞台の録画映像を見ることのできる、ゲキ×シネというものがある」「劇場で観るよりも安価で、DVDよりも迫力がすごい」と言われ、それならばと足を運んだ演目が『薔薇とサムライ』でした。

当時この作品を選んだのは①客演で呼ばれていたのが、慣れ親しんでいる宝塚歌劇団にかつて所属し、トップを務められていた天海祐希さんだったこと、そして②あの粟根さんがご出演されているということが決め手でした。

ゲキ×シネといい、宝塚や新感線のライブビューイングといい、一流の舞台が映画館で観られるというのは、既存のファンだけでなく、劇場に足を踏み入れることを躊躇っている新規のお客さんを呼び込むにはとても良い取り組みだと思います。

実際、舞台を敬遠していた友人も、一緒にゲキ×シネに行ってから新感線にハマり、今では一人でも劇場に通うようになりました。

未経験の方には、とにかく演劇ってめっちゃ良いから、悩むぐらいなら一回映画館へ行ってみ?と背中を押してあげたいものです。

今日はここまで。
次回、五右衛門ロックってなんぞ?という話を軽く(?)まとめます。

*もうひとこと*
薔薇サム2の公演にあわせて、各地で過去作のゲキ×シネ公開が決まっています。
興味をお持ちの方はぜひ!
ゲキ×シネ - 「演劇×映像」の新感覚エンターテインメント

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』感想

2022-07-23 マチネ

@ TBS赤坂ACTシアター

初演から待ち続けること6年。
舞台ハリポタ、ひっそり観てきました。

ちなみに、ロンドンのハリーポッター・スタジオツアーへ1人で行ってしまう程度にはハリポタ好きだったりします。

(パリでお世話になっていたホストマザーに、現地で撮った写真を見せたところ
「館内の様子がこれで全部分かるわ! もう私はスタジオに行かなくても大丈夫ね!」と大笑いされました)

日本に輸入されるまでの流れを
ざっとまとめると↓

世界初演は2016年。ロンドン・ウエストエンドのパレスシアターで公演が行われました。

劇場で演じられるまで、一切本編の内容が明かされないままで、かつ“前編と後編を2本の芝居で見せる2部制”という異例の体制がとられており、原作の内容を知る人も知らない人も、どのような作品なのかと心を弾ませていた記憶があります。

そして、日本で「特別リハーサル版」と題された脚本が発売されたのは、同年11月。

それまでの数ヶ月間、「呪いの子」の内容が話題に上がることはほとんどありませんでした。

なぜなら、舞台の制作者や原作者のJ・K・ローリングの呼びかけによって「#KeepTheSecrets」という運動が行われていたからです。

彼らは 『物語を自ら読み進めることで得られる高揚感や衝動を、生の舞台でも感じてほしい』 との考えから、劇場へ訪れた人に対して、なるべく内容を明かさないようにとお願いしたのでした。

このスローガンは、ニューヨークやメルボルンといった他国での「呪いの子」公演にも広がっていきます。

秘密は固く守られ、舞台を観た人たちも、詳細を語らぬ状態でSNS等に賛辞を載せるようになっていきました。

そして2022年、満を持しての日本上陸。
日本には2部制の前編を第1幕、後編を第2幕とするニューバージョンが輸入されました。

私が観た回のハリー役は藤原竜也さん。
劇場で見るのは劇団☆新感線の「シレンとラギ」以来です。
『シレンとラギ』DVD

なぜ藤原ハリーにしたのかというと、藤原さんは9末までしかハリーを演じないとの情報がチケット発売前から出ていたためです。

結果として、ものすごく原作のハリーを彷彿とさせるハマり役だったな〜と感じたので、とても良かったです。

ハリー役に限らず、他のキャスト達の演技もいつか観に行きたいと思っています。
石丸ハリーなんて写真だけでも激シブだし、向井ハリーは頭身やばすぎません??

* 向井さんの素敵蘭兵衛の記事はこちら↓

以下、日本の劇場では “KEEP THE SECRETS” の
掲示を見かけませんでしたが、念のため詳細の記載は控えています↓




実際に観た感想は『劇場という狭い空間に、あの世界観をよく詰め込むことができたな!』でした。

圧倒的な演出の数々と
巧みに練られたストーリー展開。

故意的な早口を含め、あの怒涛のスピード感でも観客を置き去りにすることなく最後まで引っ張っていく力を持った、安定感のあるカンパニー。

そしてなによりも、最終巻の続きをライブで観ることのできる喜び!

加えて各キャストに小道具等、色々と再現率高すぎでした。
特に美山加恋さんのマートル! 映画から抜け出してきたのかと思うくらいそのまんまで、めちゃくちゃビックリしました。

惜しむらくは日本に2部制の舞台が輸入されなかったこと。色々カットされているんだろうな〜。

未就学児は入場不可とありますが、おどろおどろしい演出もあるので、小学生の子どもが見たらびっくりするかも。
(ユニバの「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」に乗れる子なら問題ないかな?という感じです)

「炎のゴブレット」と「死の秘宝」をさらっていくと理解が深まると思うので、今後観に行かれる方は是非✌️

*もうひとこと*
舞台の重要な鍵を握る逆転時計(タイムターナー)の初登場は「アズカバンの囚人」だったりします。

映画版も楽しいので、手軽に復習したい場合は映像もおすすめです。

ハリー・ポッターと炎のゴブレット コレクターズ・エディション(3枚組) [Blu-ray]
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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 Blu-ray & DVDセット スペシャル・エディション(4枚組) [初回限定生産]
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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 ブルーレイ & DVDセット スペシャル・エディション(4枚組)[初回限定生産] [Blu-ray]
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髑髏城の七人 Season月(上弦・下弦)そのさん

上弦 … 2018-01-19 ソワレ
@ IHI STAGE AROUND TOKYO

下弦 … 2018-01-24 マチネ
(ライブビューイング)


祝! 『髑髏城の七人』花鳥風月極
Blu-ray BOX発売決定~!


『髑髏城の七人』花鳥風月極 Blu-ray BOX 発売日決定!ご予約に関しまして | E!インフォメーション

このボックスひとつで、色っぽいりょうとイグザクトリーな森山未來と、激シブな生瀬勝久と驚くほどのかわいさを見せつける羽野晶紀と、集大成の修羅天魔が観れるとはなんとも贅沢ですね。その分、お値段は高額ですが。

そして私は、月髑髏の感想の続きを書きます!と言っておいて、なんと1年以上も更新ができていませんでした。すみません…。

近況報告ですが、昨年2月に再就職することができました。そこからバタバタと忙しく過ごしているうちに、平成も残りあとわずかに。

4月に観にいく舞台は、残すところキンキーブーツのみとなります。初演が良かったので、あの舞台で平成を締めることができるのはとても嬉しい!

ちなみに令和一発目はレ・ミゼラブルです。
楽しみー!

更新の途絶えている間も、色々と舞台は観ていたので、機会があればまた感想など書かせていただこうかなと思います。

* 上下月の観劇後はロマーレ、1789、モーツァルト!、シークレット・ガーデン、メタルマクベスdisc1、メサイアエリザベートマリー・アントワネットるろうに剣心、ファントム、ラブ・ネバー・ダイ、キューティー・ブロンド、ロミジュリ、カサノヴァを観ました。あとは色々なアーティストのライブと平成中村座、そして人生初の文楽にも赴きました。

さて、長らくお待たせしました。
髑髏城《月》上弦・下弦のキャスト感想の続きを! …と書きたいのですが、私のメモ帳にはなぜか『まつぇ、つぅえんまおおおぉ』しか記録が残っていなかっため、観劇直後に送っていたラインから感想を拾って掲載したいと思います。お待ちいただいたのに申し訳ないです…。

なんだよ!気になるじゃないか!という人は、もうじき月のゲキ×シネが始まるので映画館へ向かってください。というか、むしろステージアラウンドの全ドクロが観れるボックスを買って、全てのシーズンを観ちゃってください!

* 《月》のあらすじはこちら↓

* 《月》捨之介・天魔王・蘭兵衛の感想はこちら↓

*《風》の感想はこちら↓



以下、ネタバレ注意









・兵庫
関八州荒武者隊を率いる兵庫は、鉈切り丸で共演していたお二人が担当。髑髏城の兵庫役は、結構しっかりとキャラ立ちしているので、俳優さんにとっては“自分らしさ”を出しづらい難しい役だろうなーと思って観ていました(歴代の色も濃いですし)。

上弦…須賀健太
本人はこう言われるのは不本意だと思いますが、かわいかったです。
荒ぶっていても、口説いていても、にじみ出るかわいさ! 裏表のない、素直な男の子といった印象。

歴代兵庫のアホな青年イメージ(中年とは言わない)とはだいぶ違う形に仕上がっていました。わざと抜けた演技をしているのが、これまたかわいい。

スーパーステージで月髑髏メンバーが劇場の下見に行っていた時、天魔王や蘭兵衛の真似をする須賀くんを見て、この人は新感線の舞台に立てることが幸せで仕方ないんだなぁと感じていたので、歴代の兵庫役をしっかりと噛み砕き、自分だけの兵庫を作り上げていたところには感動しました。

須賀くんは舞台を観るたびに、どんどん新しい一面が見えてくる気がします。某有名ドラマのイメージが根強いですが、それを払拭しようと努力されていることは、幅のある演技に繋がっていると思います。

要所要所で披露されていた、意外なほどのイケメンボイスには衝撃を覚えました。

高田太夫との組み合わせですが、年齢差があるので、一見親子のようにも見えます。どこかのタイミングでおっとおが太夫に惚れて、三角関係になるんじゃないかな?とワクワクしながら見守っていましたが、そんなことはありませんでした(当たり前)。

ただ、最後に太夫を引き止める場面なんかは、須賀兵庫の本気の演技に震えます。格好良かった。漢だった! ワガママを言うと、次回は霧丸役も観てみたいです。

39興行の当落がまだ分からないので、当たっているといいなぁ。→7月のチケット当たりましたヽ(;▽;)ノ✨

下弦…木村了
公演前は、じゅんさんのイメージが強いとおっしゃっていたようですが、ザ・兵庫!という形に仕上がっていました。
向こう見ずだけれども、頼り甲斐のある兄貴。テンポも良くて、見ていて気持ちのいい男っぷりでした。

あっさり騙されたり、みんなにいじられているのに、ちょいちょいスマートな兵庫様が姿を現して、客席を震撼させます。

羽野太夫がかわいすぎたので、兵庫がメロメロになるのも頷ける!

そして、安定した演技をされていたので、木村兵庫が舞台に上がると安心感がありました。蜉蝣峠勝地涼さんと共演されていた時は、二人とも兵庫役を演じることになるとは考えてもいなかっただろうな。また客演で呼ばれると予想しているので、次回を楽しみにしています!

・霧丸
歴代の髑髏城作品と比較した際に、一番の変更点といっても過言ではない、元『沙霧』さん。まさかの男性になってしまった役。

ヒロイン枠をなくすことで、舞台がどのように変わるのか気になっていましたが、今まで描かれてきた沙霧の淡い恋心がなくなった分、同性だからこそ演じられる共闘シーンが追加され、迫力がアップ!

性格的には、初っ端から関八州荒武者隊を見捨てる前提で動いていたりするので、月髑髏の展開が不安になりましたが、そのぶん作品を通して成長していく霧丸の姿が観れるのはとても良かったです。

また、捨之介との信頼関係が垣間見えて、舞台がより締まったように感じました。

上弦…平間壮一
下弦…松岡広大


全てを分かったうえで、それでも復讐に揺れている上弦。そして自分を信じ、全力で前に進む下弦。違った役作りをされているからこそ、他の役との関係性が大きく変わって見えましたし、それが上下の違いとして表れているようにも感じました。

平間霧はおかんのような高田太夫とのやりとりにほっこりします。

そういえば、霧丸(沙霧)の母親については舞台上で言及されませんが、どうなっているのだろう? 髑髏党に殺された、熊木衆に含まれるという理解でいいのでしょうか。かずきさんの小説版を読めずじまいでいるので(実家にある)、そんなことがふと気になったり。

なんにせよ、熊木衆のみんなを失った霧丸が、太夫を始めとした無界の里の面々に少しずつ心を許していくところでは「良かったね、霧丸…!」という気持ちにさせられるのに、無界屋襲撃という恐ろしいイベントが待ち受けているのだから、本当に悲しかった。蘭兵衛を止められなかった悔しさは、沙霧演出の時よりもひしひしと伝わってきます。

松岡霧は羽野太夫に惚れていてもなんら違和感のないやりとりをされていました。いやむしろ、あそこまで太夫に親切にされたら、好きになっていない方がおかしいのでは?

そういった意味では、月髑髏は兵庫役と霧丸役が重なって見えたような気がします。霧丸が太夫に恋愛感情を抱いているわけではないのですが、初見の人は、若い男性陣がたくさん出てきて分かりづらい場面もあると思うので、~風髑髏のように「沙霧」という明確なヒロインが存在している方が、理解しやすいのかもしれません。どちらも好きですけどね。

・極楽太夫
色々な人が演じてきた、魅惑のお姉さま。ベテラン二人は、どちらも月髑髏には欠かせない素敵な女性を仕上げられていました。

上弦…高田聖子
安定の聖子さん。半端ない安心感と、全てを包み込む包容力。

正直、高田太夫の前では霧丸も兵庫も幼い子どものように見えます。超ワカドクロの面々を率いる保護者役。芯のある強い女性ですが、台詞の裏には彼女が強くならざるをえなかった理由が見え隠れしていて、切ない気持ちになる場面もありました。

他のキャストと作品上の年齢差は感じましたが、極楽太夫を演じるにあたって、実年齢の差がネックになったということは全くありませんでした。むしろ、経験が豊富で魅力的な太夫に映りました。須賀兵庫との間に、恋愛関係が成立していたのかと聞かれれば、それは「…?」でしたけれども。笑

高田さんのギャグ要素強めの演技も好きですが、凛とした美しい太夫はとても素敵でした!

下弦…羽野晶紀
年齢設定を感じさせないかわいさ。もうほんとに、びっっくりするぐらいかわいかった! え、27年ぶり? “羽野さんが27歳”の間違いじゃないですか?

上弦では兵庫のかわいさにヒャーヒャー言ってましたが、下弦は太夫にメロメロにされました。無界での慕われっぷり。彼女へ盲目的な愛を注ぐ兵庫。そして、霧丸からの信頼。全てに大納得です。

沙霧さんのヒロイン枠も奪っていたので、もういっそ極楽がヒロインでいいじゃない! と思ったら、次に待ち受けているのが極なんだから、さすがですよね~劇団☆新感線

下弦に関しては、太夫と蘭兵衛が傷を舐め合い、男女として心を通わせる一面があったであろうと勝手に想像しているので、二人きりになった時の雰囲気が、もう恋人のそれとしか思えません。前回のブログにも書きましたが、羽野太夫と廣瀬蘭兵衛の組み合わせはめちゃくちゃ好きでした。

ただ相思相愛というよりは、互いに重い過去を抱えている点で共感意識が生まれていて、戦乱の世を人として生き抜くために、心の隙間を補うべく相手を求めた…というような依存関係に近いものがあったと解釈しているので、特に後半戦は羽野太夫の複雑な心理描写がすごかったなと思います。絶妙な緩急の使い分けは、お見事としか言いようがありません。

(履歴が残っていたのはここまででした!)

狸穴二郎衛門は、千葉哲也さんの貫禄ある演技を楽しみましたが、私はいっけい衛門をめちゃくちゃ楽しみにしていたので、生で観ることができなかったのは本当に残念…(1/19の上弦は、渡辺いっけいさんが体調不良でお休みをされていました)。

ゲキシネBlu-rayでリベンジするしかないですね。

他にも大好きな粟根さんが渡京を演っていたり、贋鉄斎が全力で変態だったり、捨之介が剣布にセクハラを働いたり、まさかのツイスターゲームが開催されたり、追いかけっこで一輪車やスケボーが活躍したりと見所は盛りだくさん! 興味を持った方は、近々ゲキシネの日程が発表されると思うので、ぜひ両方観てみてくださいね。

*もうひとこと*
髑髏城のゲキ×シネ予告動画が順次アップされてますが、素敵すぎやしませんか? 何度再生ボタンを押したことか。


ゲキ×シネ『髑髏城の七人』花鳥風月極|ゲキ×シネ - 「演劇×映像」の新感覚エンターテインメント

しかも花鳥髑髏の動画を作られたted様が、キューティー・ブランドやヘアスプレーも予告篇演出されていたなんて! センスの塊すぎる…。

髑髏城の七人 Season月(上弦・下弦)そのに

上弦 … 2018-01-19 ソワレ
@ IHI STAGE AROUND TOKYO

下弦 … 2018-01-24 マチネ
(ライブビューイング)

前回に引き続き、髑髏城《月》上弦・下弦の感想を書いていきたいと思います。

書くことが多すぎて、なかなかまとめられないうちに《月》公演は無事千秋楽を迎え、そしてドクロのあとの公演情報も解禁されましたね!

大好きなメタルマクベス。再演されないと思っていたので、めちゃくちゃ嬉しいです!

しかも髑髏城に引き続き、メタルマクベスも【disc1】【disc2】【disc3】の3作連続上演で、幅広いキャスト陣が発表されました。
実は今回のメタルマクベス、私の同級生がキャストとして出演したりしています。はやく観たいな〜!

というわけで、話を《月》に戻します。

* 《月》のあらすじはこちら↓

*《風》の感想はこちら↓

私が観たのは、渡辺いっけいさんが体調不良でお休みされていた日だったので、上弦・下弦ともに千葉二郎衛門となっています。


以下、ネタバレ注意






〈上弦〉
さらさらロングストレート率が高すぎて、カーテンコールでおののきます。まさに“超”ワカドクロ! キャラ作りも一新されていて、目が離せない舞台でした。

〈下弦〉
声優は“声”のプロ。その考えを改めました。ええ声してる人が姿を現したら、もっと良いものにしかなりません。なんでみんな、あんなに多才なのか? とても濃い舞台でした。

まずは、かつて信長に仕えた3人の感想から。

・捨之介
今回の捨之介は、最後まで天魔王を救おうとします。一生懸命にもがく二人の捨之介は、同じ脚本のはずなのに、全く違う仕上がりでした。

そして、斬鎧剣を使っての戦闘がめちゃくちゃ格好良い! 第六天にいる天魔王を下界に引きずり落とすため、斬って斬って斬りまくります。仕掛けが一つじゃなくて、まるでマトリョーシカのように、次々と仕込み刀が出てくるんです(伝わるかしら?)。冒頭の『天魔王誕生』はここに繋がるのね〜!

上弦…福士蒼汰
超ワカドクロの顔。朝ドラの種市先輩が大好きだった私は、番傘で見得を切る福士さんにノックアウトされました…!

ワカドクロの小栗捨之介や、三浦春馬が演じた明智心九郎(ジパングパンク)の勢いある演技にも驚きましたが、若々しくて純真な捨之介はなんとも新鮮。

殺陣は、呼吸するように自然と刃を動かす早乙女天魔王や、しなやかに舞う三浦蘭兵衛に挟まれると、福士捨之介の動きには少し重みがあるように感じました。
ただ、小姓であった蘭兵衛や“人の男”と違い、“地を這う”男だったことを考えると、粗野な太刀捌きをしている方がらしいといえばらしいのかもしれません。

休演者がいることを受けて、アドリブで「おれは大丈夫だー!」と叫んだり、贋鉄斎に渡す紙を間違えたりと、ちょいちょい素の姿が見えて可愛かったです。

霧丸との掛け合いがものすごく良かった! 男女設定が好きだったのですが、この組み合わせの方がしっくりくるかもしれない。

2回公演の夜に観に行ったので、終盤の滑舌がお疲れな感じで、少しもったいなかったです!

なんにせよ、これが舞台初主演。というより初舞台とは思えませんでした。突然のキャスティング変更にも『上と下がくっついて、ひとつ(の月)になる』と言いきれるあたり、もう立派な座長さんだなぁと感じました。
また舞台で観られることを楽しみにしています!

下弦…宮野真守
終始、笑顔が溢れています。ライブビューイングで観たので、画面に映っていないのに、宮野さんの笑い声だけが常に聞こえてくるという不思議な体験。

前回観たイズミル王子(王家の紋章)は馬鹿笑いするようなキャラではないので、かなりギャップがありました。

ただ一口に“笑う”とはいっても、笑い方は多様で、どの場面でも違和感がないんです。ニヤついた笑みを浮かべたかと思えば、自嘲するように声を漏らしたり。とにかく表情が豊かでした。下弦はライブビューイングにしておいて正解だったかもしれません(上弦はオペラグラスを必死にのぞきました)。

それにしても、宮野捨之介は本当に死に急ぎます。蘭兵衛や天魔王に色々と語り聞かせるにもかかわらず、捨之介自身の危うい一面も要所要所で垣間見える。

死んじゃだめ!と太夫たちが説得するのに、髑髏城を逃れた後、家康たちに囲まれた捨之介は明らかに生きることを諦めていました。
本人の台詞にもありますが、過去を乗り越えたつもりでいながら、ちっとも捨てきれてないんですよね。

今までの髑髏城には、捨之介が天魔王(=“天”)に斬鎧剣を突き立てるという、いわば過去を切り捨てる場面が含まれていたのですが、演出の変更に伴って、“天魔の鎧”を剥ぎ落とすだけに変わっています。

過去を引きずったままだからこそ、追い詰められた捨之介が、終わりを覚悟していてもなんら違和感がない。むしろ、こちらの方が“格好良いヒーロー”というよりも、人間味があって感情移入しやすかったかもしれないです。

そして憑き物が落ちてからは、また顔つきが変わるという。
これからもどんどんミュージカルに参加するんでしょうね。色々な役を観てみたいです!

・天魔王
“人の男”から天魔王になるまでが描かれます! その代わり、敦盛はありません。天魔王様に月を見てほしかった…。

この役は、上と下で全く性格が違うように感じました。髑髏城にずっと関わってきた早乙女くんと、初参加の鈴木さんでは、解釈が違ったのだと思います。練習は同時進行だったことを考えると、ここまで違う役になったのは不思議ですね!

上弦…早乙女太一
新感線の舞台では、早々に退場することが多かった早乙女太一。満を持しての天魔王役です!

インタビューには、染様と森山未來の影響を受けていると書かれていましが、実際に観てみると、やはりワカ・鳥で対峙していた森山天魔王の色が強く出ていました。というか、あのイグザクトリー!を間近で見ていたら、頭から離れなくもなるわ。笑

安土城六欲天について語るところから舞台は始まりますが、初っ端から目の演技がすごい。あんな寄り目で迫られたら、まともに戦えなくなってしまいそう。

また、本能寺から逃れた際にできたであろう火傷の跡が両手と首元にあるのですが、それがなんとも不気味です。最初は返り血がこびりついているのかと思いました。鈴木さんの時は気にならなかったのですが、スクリーンで観たからでしょうか?

〈上弦〉を一緒に観た姉は、天魔王の最後の戦闘シーンで、鎧を剥がされていく際の仕草が女性みたいだった!と騒いでいました。

女性的な一面を持っていたと考えると、小姓として信長に仕えていた“人の男”には、忠誠心だけではなく特別な感情があったのかもしれない。寵愛を受ける蘭丸を見て、次第に心が歪んでしまったとしたら。愛ゆえに謀反を企てて、それでも最期ぐらいは、自分だけにかけてくれる言葉があるはずだと期待していたのであれば、本能寺から逃れた“人の男”が、信長に成り代わろうとする姿はなんとも切ないです。

あとは、生駒とのかけあいが良かった! 「生駒がそう言うなら仕方ないか」「聞いてよ生駒〜!」って感じにじゃれる姿は、素直に甘えているようにも見えました。本人が思っていたよりも、生駒の存在は精神的な拠り所になっていたのかもしれない。

殺す覚悟はしていただろうに、自ら首元を切りつけた生駒カナコさんを、驚きの表情で見つめる早乙女天魔。“天魔王”として生まれ変わったはずの“人の男”にも、人間らしい部分がちらちら出てくるのですが、それでも最期は変わることなく、自ら身を投げるという展開に。早乙女天魔には生き続けてほしかったです…!

下弦…鈴木拡樹
ゲスいな、というのが率直な感想です(褒め言葉)。

最初から最後まで、徹底した悪を貫く鈴木天魔王。

あまりの冷徹さが、むしろ潔い。
鈴木さん初見でしたが、舞台を引き締める、存在感たっぷりの役者さんでした!

徹底しているからこそ、その姿に惹かれる者が彼の周りには集まっているわけで。髑髏党の皆さんは、あの残虐さに心酔しているのだと思うと、なかなか怖いですね。
特に、さとみ生駒さんがのど元に刀をぶっ刺したのには驚きました。死に方が「ハイ、生駒喜んでー!」って感じで、狂気を感じます。天魔王様、なんて恐ろしい子…!

〈下弦〉生駒からは天魔王様に対する愛が溢れているのですが、あっさり切り捨てられちゃいましたね。あくまで鈴木天魔王は、自らの野望のために信長を陥れ、戦乱の世を取り戻そうとしているように映りました。

そんな鈴木天魔王を観ていると、捨之介が倒しちゃえばいいのに!と思えてきてしまいますが、宮野捨之介は彼に手を差し伸べます。なんて優しい。

けれど、天魔王はその申し出を受け入れない。というか理解できないんでしょうね。捨之介を道連れにすべく、城から飛び降ります。最後までちゃんと恨ませてくれるよね〜(誉め言葉)。

鈴木天魔が“悪”を演じ切ったおかげで、作品がすっきりまとまっていた気がします。個人的には、上下の天魔王の差が、観ていて一番面白いところでした!

・無界屋蘭兵衛
役柄的には、第一幕は良い役で、第二幕に闇堕ちしますが、どちらの蘭兵衛さんもクライマックスに近づけば近づくほど、どんどん魅力が増していきました。

上弦…三浦翔平
登場シーンは、正直、役のわりに洗練された様子が見られないと思っていました。
しかし、第二幕でその認識は間違っていることに気づかされます。“蘭丸”が顔をのぞかせてからは豹変! 三浦蘭兵衛をまとう空気が、まるで別人のようになります。騙された〜使い分けてただけなのね〜!

三浦翔平は『奪い愛、冬』の康太役が認められての新感線参加だったのかな?と勝手に推測していたのですが、負けず劣らず。そして、殺陣も上手で驚きました。これからもどんどん舞台に出てほしいです!

下弦…廣瀬智紀
当初感情の見えない役柄でしたが、各キャストとの絡みで心情の変化を細かく演じられていて、素敵でした。

そして羽野太夫とのやりとりが、もう恋人同士のそれでしかない。太夫と蘭兵衛がイチャイチャしてるの大好きなんで、あの絡みはすごく良かった!

〈上弦〉は太夫との間に距離を置いているように感じたのですが、〈下弦〉では太夫が大切だからこそ、彼女に嘘をついてから、こっそりと里を抜け出します。本当に、どうして裏切った!でしたよ廣瀬蘭兵衛。この組み合わせでまた観たいなぁ…。

以上、3人の感想でした。
残りのキャストについては、また次回!

髑髏城の七人 Season月(上弦・下弦)そのいち

上弦 … 2018-01-19 ソワレ
@ IHI STAGE AROUND TOKYO

下弦 … 2018-01-24 マチネ
(ライブビューイング)

上弦・下弦の髑髏城《月》、遂に登城してまいりました!

* 《風》の感想はこちら↓

私が観た日は、上弦に出ている渡辺いっけいさん・木村桃子さんが体調不良のため、出演者が変更になっていました(下弦のキャストとチェンジ)。

いっけい衛門を楽しみにしていた私は、劇場へ向かう電車の中で、公式HPを見て大絶叫です。
会いたすぎて震えちゃいました。カナさんの気持ちがあんなに理解できたのは、初めてかもしれない…。

あらすじはだいたいこんな感じ↓

燃え盛る、安土城天守閣。
そこに現れた謎の男は、織田信長の遺した“天魔の鎧”を手にとり、高らかに宣言した。

我こそが、志半ばで潰えた織田信長の後を継ぐ者であると。

かつて“天”を支えた一人の男は、炎の中で“第六天魔王”となるのだった。


時は天正十八年。
関東平野に漆黒の髑髏城を構えた天魔王は、武装集団《関東髑髏党》を率いて、暴虐の限りを尽くしていた。
天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は、天魔王を討ち取るべく、その首に金500枚の報酬を賭ける。

そんな折に、関東髑髏党に追われていた少年・霧丸を助けた捨之介は、野武士集団《関八州荒武者隊》の頭目・兵庫に連れられて関東一の色里《無界の里》を訪れる。
無界一の人気を誇る極楽太夫や、諸国流浪のやせ浪人・狸穴二郎衛門、捨之介とは旧知の無界屋蘭兵衛など、奇妙な縁に操られ、関東に集まる者たち。

総勢二十万の兵による、秀吉の関東征伐が今にも始まらんとするとき、関東平野に相まみえた蘭兵衛と捨之助、そして天魔王。

蘭兵衛と捨之助が抱える過去とは?
天魔王との因縁とは?

いま、天魔王の悪しき野望が明らかになろうとしていた。

以下、ネタバレ注意






2017年は花鳥風で様々な髑髏城が描かれてきましたが、《月》では新しい演出がまた盛りだくさん。

まず、天魔王の誕生シーンが追加されました!

スクリーンに“安土城天守閣”の文字が出てきた時は意味が分からなかったのですが、どセンターに配置されている“天魔の鎧”を見て納得。

《月》の第一幕冒頭では、本能寺で信長が亡くなった後、安土城に戻った“人の男”が、天守閣に残された南蛮物の鎧を手にするところから物語が始まっていきます。

今までの髑髏城でも、天魔王は「殿の遺志と鎧を託されたんだ!」と発言していましたが、本能寺から逃げる時に鎧を盗んで行ったのかなーぐらいにしか考えてませんでした。
でも、あんないかつい鎧では目立ちまくる(今回の鎧は黄金色で派手な装飾付き!)うえに、下手すれば信長が逃げ出したと間違われかねないですよね。

その点、今回の《月》のように、安土城に残された鎧を奪い取るために天魔王が火を放ったのであれば、誰が安土城を焼き払ったのか?という史実上の謎も解決されます。

信長が最も天に近づいた場所=安土城天守閣こそが他化自在天(第六天)だという解釈も、さすがだな〜と思いました。

“人の男”は、自らを“第六天魔王”と名乗っていた信長公の鎧を纏うことで、天魔王になっていきます。

今回も、第二幕の冒頭にあるはずの敦盛は省かれていますが、代わりに第一幕冒頭で天魔王様が舞います。魅せます。曲もダンスも格好良いです!

台詞と『天魔王誕生』という曲にのせて、六欲天の説明がされますが、これが後々大きな伏線となっていきます。

それにしても、《月》なのに月見酒のくだりがないのは残念ですね。修羅天魔でも省かれてしまうのかな。
なんにせよ「六欲天を、ご存知か?」と言いながら登場する《月》の天魔王様は素敵ですので、ご期待を!

そして、沙霧(女)が霧丸(男)に変更されました。
それに伴って、混乱する沙霧が捨之介を“刺す”場面がなくなっていたり、二人の関係性が今までとは変わっていたりします。

捨之介と霧丸を見ていると、まるで兄弟のように親しげで、この設定はこれで良いかもなーと思いました。

その他にも、極楽太夫と兵庫・蘭兵衛に年齢差があったり、おっとうの武器や斬鎧剣がパワーアップしていたりと、魅力たっぷりの4時間。

長くなってまいりましたので、キャスト陣に対する感想は、次回に持ち越しさせていただきます!

ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜(雪組)感想

2018-01-10 13時30分公演
@ 東京宝塚大劇場

ポーの興奮冷めやらぬまま、観てきました。ロベスピエール

最近、フランス革命前後のヨーロッパ物が多いですね、宝塚。
いや、大好きだから嬉しいんですけど!

今回は雪組新トップコンビの望海さんと真彩さんの大劇場お披露目公演になります。

先に観た姉から聞かされたのは、
「ミイラ取りがミイラになる」
ロベスピエールの感情が一瞬にして切り替わる」
「スパボジャ(SUPER VOYAGER! のことらしい)はマスターしていくべき」
という謎の情報だけ。

でも、見終わったらその意味が分かりました。
ポンポンを持って、ダンスを完璧に踊っているお客さんがたくさん! すごい!

今回の主人公は、タイトルからも分かるように、革命家のロベスピエール

ロベスピエールといえば、私は東宝1789の古川雄大さんが大好きです。

衣装といいダンスといい、古川くんにはピッタリの役で、映像化されなかったのが本当に残念。しかし次の1789は、まさかのロベピキャスト替えという…。

悲しいですが、代わりにモーツァルトという大役をされるので、そちらに期待しています!

話を戻しますが、その1789の中で、ロベスピエール岡幸二郎さんの演じる貴族将校・ペイロールに足蹴にされるシーンがあります。
言葉の通り“足蹴”
地面に伏している古川ロベピの頭を、ぐりっと踏みつける岡さん(ここの古川くんはなんだかとっても色っぽくて、すごくいい演技してました)。

ロベスピエールは、国王陛下の名の下に!と自分を踏んずけてきたペイロールにイラァっときた上に、“革命の兄弟”とまで呼んでいたロナンの命を奪われて、次第に心が荒んでいったんだろうなあ…と感じられるのが東宝1789だったので、今回のひかりふる路は、大切なものを奪われたロベスピエールが、革命の理念を捻じ曲げられないように権力を振るった結果、粛清弾圧の恐怖政治と呼ばれる未来に結びついてしまう、なんて筋書きなのかなと予想したりしていました。

あらすじはだいたいこんな感じ↓

1792年11月13日、パリではフランス国王ルイ16世の裁判が行われていた。
その場には若き革命家、マクシミリアン・ロベスピエール(マクシム)の姿もある。

急進派のジャコバン派に属するサン=ジュスト達は、穏健派のジロンド派に国王の存在意義を問いかけ、ルイ16世をギロチン台へと導く。

“ジロンド派の女王”の異名を持つロラン夫人や政治家・タレーランは事態を見守りつつ、転覆の機会をうかがうことにする。

新しい時代の訪れに沸くフランスだったが、その裏側で犠牲になる者も少なからず存在した。元貴族のマリー=アンヌは、革命によって家族と婚約者を失う。彼女は革命の中心人物であるマクシムを恨み、復讐を決断するのだった。


ジャコバン・クラブでは、司法大臣を務めるジョルジュ・ジャック・ダントンやジャコバン思想の新聞を発行するジャーナリストのカミーユ・デムーランが、マクシムと熱い議論を交わしていた。
彼らは革命の同志であるとともに、固い友情で結ばれた間柄で、これからのフランスのために力を尽くすことを誓い合う。

ジャコバン・クラブに潜り込んだマリー=アンヌは議員たちに絡まれるが、そこで救いの手を差し伸べたのがマクシムだった。
仇を目の前にして、心が騒ぐマリー=アンヌ。そしてマクシムも、彼女に対して惹かれるものを感じるのであった。


場面は変わり、ジロンド派に呼び出されるダントン。
国王処刑により、他国からの反感を買っていたフランスを守るため、ダントンはイギリスに多額の機密費を流していたのだが、約束は反故にされてしまう。
ジロンド派に弱みを握られたダントンは、防衛戦での指揮を担うことになるが、警備が手薄になった国内では反革命分子による内乱が勃発し、混乱を極める。

絶望的な状況で、マクシムはマリー=アンヌに夢を語った。
人には心があり、その心によって互いに憎しみ、争い、奪い合っている。その連鎖を止めることが自分の願いであり、革命の目指す道だと。

マクシムはマリー=アンヌに愛を打ち明け、過去は問わないと歩み寄る。
彼のひたむきな姿に心打たれたマリー=アンヌも、過去を乗り越え、マクシムとともに未来を生きていく決心を固める。

タレーラン達は、革命をさらに内側から崩壊すべく、内紛に関する書簡やダントンの行動をジャコバン派にリークした。
友の裏切りに衝撃を受けるマクシム。
彼は革命を守るべく立ち上がるのだった。全てはマリー=アンヌとの愛のために…。


以下、ネタバレ注意





もともと公演チラシを見て、色々気になっていました。
厳しい瞳のロベスピエール。そして、彼に抱かれるマリー=アンヌは、ナイフを握りしめている。

なので、ロベスピエールはマリー=アンヌを愛しながら、彼女の行動に違和感を抱くといったスカピン的な展開が序盤から続くかと思っていましたが、むしろ大半は純愛物語でした。

恋なんかしてる場合じゃないよ!と一笑していた熱血革命家のマクシムは、マリー=アンヌと出会い、無償の愛を注ぐようになります。

言いたくないなら、過去も素性も話さなくていい。ただ愛して共に歩んでくれるのであれば…というひたむきな想いを向けられたからこそ、マリー=アンヌは悲惨な過去を乗り越える決意ができたのでしょうね。

『愛の為に、世界を変える。』というキャッチコピーに、二人の願いが込められているんですね。観始めたら大納得でした!

ひかりふる路はフランク・ワイルドホーンさんが作曲を担当されていることもあり、楽曲を中心に物語が進んでいきます。
一幕だけの芝居なのに、あれだけの曲が使われているとは、なんとも贅沢。ある意味、宝塚らしからぬ舞台だったかもしれませんね。輸入物を観ている気分でした。

外部のミュージカルでしょっちゅうワイルドホーンさんの曲を聴いていたので、宝塚に楽曲を書き下ろしたのが NEVER SAY GOODBYE 以来だとは思っていませんでした。いやぁ流石です。良い曲ばっかりでした。

マクシミリアン・ロベスピエール(望海風斗)

トップ就任おめでとうございます!
星逢一夜やるろ剣で心に刺さる演技を観せてくれただいもんさん。今回は革命家ロベスピエールの様々な感情を、楽曲にのせて紡ぎます。

序盤は華がない、というより“革命家の一人”という立ち位置をしっかり守っているのですが、マリー=アンヌに恋をしてからは、どんどん魅力を前面に打ち出していきます。すごいです。そしてイケボ。

誰よりも革命の先を夢見て、苦悩し続けるマクシム。
タレーランの陰謀により、最後は処刑されることになりますが、幕が降りるまで美しい。凛とした後ろ姿がとても素敵で、だからこそ切なかったです。

そしてレヴューがまた良かったー!
心を表したような、素直な楽曲が胸に響きました。これからも頑張りますので、というひたむきな気持ちが伝わってきて、新生雪組がますます楽しみです。

・ マリー=アンヌ(真彩希帆)

与えられた楽曲は複雑で、感情の移り変わりも激しい難役。
感情を吐露し続けるマクシムと比べても、迫力を感じる存在でした。

肉親や婚約者を奪った革命を否定するために、マリー=アンヌは『彼が革命そのものだというのなら』と、マクシムの暗殺計画を歌にのせて語ります。

貴族らしい気品を備えながら、それでいて、荒々しいむき出しの感情が溢れていた真彩=アンヌ。正直、この時点では理想を語るマクシムよりも、マリー=アンヌの復讐劇を応援したくなりました。

しかし、マクシムと出会ったマリー=アンヌは、いつしか彼の描く未来を望むようになる。
絶望を抱えていた彼女は、新たな友人や家族と呼べる存在を手に入れ、明るい今後に向かって歩きだします。

その後の展開が予測できるだけに、ここで終わっていればハッピーエンドなのに! と思わず拳を握ってしまいました。

争いのない未来を夢見て、一度は過去を捨てる決意をしたマリー=アンヌですが、マクシムが人々を苦しめてまで革命を推し進めようとする姿を見て、彼を否定します。

犠牲の上に成り立つ幸せは、本当の幸せではないというのが彼女の考えですから、ここで悲しいすれ違いが生まれてしまうんですよね。マクシムはマリー=アンヌのためを思って頑張っているのですが。

革命の象徴である“彼”を殺さなくてはならないというマリー=アンヌの考えは、いつしか、愛した人の暴走を止めるために、私が『彼を殺さなくてはならない』という見解に変わっていきます。
恨みというよりは、愛ゆえに。

最後の牢獄のシーンで、マリー=アンヌとマクシムが本心を語り、心を通じ合わせたところでは、ようやく結ばれた二人に心が熱くなりました。

マクシムに背中を押されたマリー=アンヌは、これから一人で生きていかなければならないんですね。辛すぎる…。

・ ジョルジュ・ジャック・ダントン(彩風咲奈)

豪快!男前!

この作品の中では、マクシムが彼の手を取れなかったことで、革命が潰えていく様が描かれていきます。

『イギリスにはお金を渡したら、きっと大丈夫だ!』
そうやって勢いで単独行動してしまうところ、嫌いじゃありません。
というか、終始憎めない役どころ。

彩風さんは『悪・即・斬』のイメージが強かったのですが、見事に上書きされました。歌も良かったし、演技に魅了されました。

デムーランからの手紙を受け取り、すぐにマクシムを救うべくパリへ帰ってくるところなんか、格好良すぎて涙出ます。
奥さん大好きなところも素敵。

また、処刑直前にロベスピエールに向けて「次はお前の番だ」と言い残したのは有名な逸話ですが、この舞台では『先に行って待ってるぞ、マクシム』的な台詞に置きかえられていて、最後まで頼れる兄貴分には感動させられっぱなしでした。

カミーユ・デムーラン(沙央くらま)

コマさん退団公演だったのですね…。
男女役、どちらも好きでした。

1789でダントンを演じられていたこともあり、今回はどのように役作りされているのだろう?と楽しみにしていました。

マリー=アンヌとともに、友人であるマクシムを救うべく、奮闘し続けるデムーラン。
優しい人柄が観客には伝わってくるだけに、マクシムと相容れない様子が見ていて辛いです。

ダントンほどの派手さはありませんが、舞台に出るだけで不思議と安心できます。
ダントンじゃないとマクシムを止められない! と言っていましたが、ちょっぴりあやういマクシムと破天荒なダントンの間には、あなたがいたからこそいいバランスが保てていたんだと思いますよ。

ありがとうデムーラン。
お疲れ様でした、沙央さん。

タレーラン役の夏美ようさんや、ロラン夫人の彩凪翔さん(女性役すると思ってなかった!)は、影で暗躍する役であるため出番こそ少ないものの、安定の演技力で魅せてもらいました。

ギロチン台で凛と佇むロラン夫人は、すごく良かったです。憎々しげな表情が、また味があって…!

ところでギロチン台といえば、今回は舞台の背景やキャスト陣の衣装に、ギロチンを彷彿とさせる斜め線(『/』のような線)が入っていました。
また、ギロチンが落とされるたびに、血をイメージするような映像が背景に浮かび上がったりします。

明るく談笑している場面であっても、そのギロチンがちらっと目に入ると、時代の暗さというか、革命の裏側で人が殺められているという事実が私たちに突きつけられているようで、効果的な演出だったなーと思います。

そして最後に。外せないあーささん!
美しい月城かなとさん(あの人のスタイルの良さは異常だと思う。褒め言葉!)とトレードで組替えとなった朝美絢さんは、今回ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト役をされていました。

マクシムに心酔し、生涯彼を支え続ける『花のサン・ジュスト君』。

革命の大天使と呼ばれる彼ですが、マクシムを崇拝するあまり、彼を神格化し、次々と反革命分子を処刑していきます。

サン=ジュストの『栄光へと導く救世主が必要なのです』という語りかけから、マクシムが『私が革命を守る!』と宣言するまでの流れは、後押ししたというよりも、まるで洗脳のようでした。でも、美しいから許されてしまう。なんて怖いサン=ジュスト君。

マクシムと同じ理想を追い求め、人を殺め続ける姿は狂気じみていますが、マリー=アンヌに対して嫉妬のような表情を浮かべたり、生きがいをなくし立ち尽くすマクシムを見て戸惑うサン=ジュスト君の姿はとても人間らしく、ただただ純粋な青年の姿を垣間見ることもできました。

彼がいなければ、この舞台は成り立っていなかった。今後が楽しみです!

雪組は、次もパリが舞台の『凱旋門』。和物じゃないんですね。

柴田先生の脚本で再演ということなので、倍率が高かったりするのでしょうか。

また、かつてこの作品で主演をし、文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞した轟悠さんが専科として舞台に立たれることも、見どころの一つですね。
追加情報を楽しみにしています!

*もうひとこと*
東宝1789、私は小池徹平×神田沙也加×凰稀かなめ加藤和樹×夢咲ねね×花總まりの組み合わせで観に行きました。
今年はどの組み合わせで行こうか、まだ迷っています。
もちろん宝塚版も観ましたよ!

『1789―バスティーユの恋人たち―』月組宝塚大劇場公演ライブCD

みやるりのアルトワ伯にどハマりしましたね。
1789については、また語りたいと思います。

ポーの一族(花組)感想

2018-01-03 15時公演
@ 宝塚大劇場

あけましておめでとうございます。
今年もちまちまと演劇記録をつけていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

年末年始で関西に帰省することができたので、諦めかけていた宝塚のお正月公演を観てきました。

演目は『ポーの一族』。
ミュージカル・ゴシックです!

ミュージカル・ゴシックといえば、月組『薔薇の封印 -ヴァンパイア・レクイエム-』を思い出す人が多いのではないでしょうか。

薔薇の封印は『ポーの一族』のオマージュと言われており、薔薇の谷の設定などは、原作者である萩尾望都先生の許可を得ていると公式に記載されています。

薔薇の封印は私も大好きな演目で、何度もDVDを観ています。

ポーは永遠の少年という形で描かれていきますが、薔薇の封印に出てくるフランシス(紫吹淳)とミハイル(彩輝直)は、青年の容姿を保ちながら色々な時代を旅していきます。
修道僧や亡命貴族、ダンサーに錬金術師と、年代が変わるたびに魅力的な装いで登場してくるトップスター達は圧巻です。
紫吹さんの退団公演ということで、一本ものであるにも関わらず、ダンスが大量に盛り込まれているのも見どころですね。

私は彩輝さんを追いかけていたので、『荒ぶる魂』をエンドレスリピートしてました。観終わった後に、頭の中でエバーライフ!と回るのは、きっと私だけじゃないはず。

荒ぶる魂

荒ぶる魂

たしかDVDは生産終了していたかと思いますが、ポーを観て楽しかった! という人は、スカイステージでもたまにやっているみたいですし、こちらの作品もオススメです。小池先生の『バンパネラの世界を舞台上で表現したい!』という熱い想いが伝わってきますよ。

前知識はその程度で、実は『ポーの一族』に関しては、原作を数話読んだことがある程度でした。
ですので、あくまで“宝塚歌劇”による『ポーの一族』の感想のみを記載させていただきます。


まず劇場に入ると、オケ隊の生演奏が出迎えてくれました。これを聴くと、新年を迎えたんだなーという気持ちになります。

宝塚大劇場では、三が日の開場時に、歌劇のオーケストラピックアップメンバーによるロビー・ウェルカム演奏が楽しめます。

私が聴いた曲目は、
・世界の王(ロミオとジュリエット
・金色の砂漠(金色の砂漠)
・炎の中へ(THE SCARLET PIMPERNEL)
・闇が広がる(エリザベート
ランベス・ウォーク(ME AND MY GIRL)

だったかと。

みりおさんが出演された演目で揃えていたみたいです。

一緒に行った叔母が「オケが『ひとかけらの勇気』やってたね〜!」と嬉しそうに話していたので、もしかしたらスカピンの楽曲はそちらだったかもしれません。記憶が曖昧です。

仕方ない。その後に観た舞台の印象が! 強すぎて! 吹っ飛んでったんですよ!(言い訳)


あらすじはだいたいこんな感じ↓

1964年、西ドイツのフランクフルト空港にバンパネラ研究家が集まった。

100年以上にわたって語り継がれてきたバンパネラ伝説が、ドン・マーシャル、バイク・ブラウン4世、マルグリット・ヘッセン達によって明かされてゆく。


イギリスの片田舎、スコッティの村で囁かれ続けてきた噂話。
崖の上の館に暮らすポーツネルの一族は、時を止め、生き続けるバンパネラらしい。

そのポーツネルの館で育てられていたのが、幼いころにスコッティの村近くの森に置き去りにされた、エドガーと妹のメリーベル。

エドガーは、ポーツネル一族に関する噂を信じていなかったが、館の秘密の広間にて行われた婚約式をのぞき見た際に、彼らが永遠の命を持つバンパネラ、“ポーの一族”であることを知ってしまう。

一族の正体を知ったエドガーは、愛する妹メリーベルを守るため、運命を受け入れ、“ポーの一族”に加わることになる。

終わりなき時を生きる運命を背負ったエドガーは、時を超え場所を変えて、生き続けていく。

そして舞台は1879年に。
エドガーは義理の両親であるポーツネル男爵夫妻と、“ポーの一族”として生きる道を選んだメリーベルとともに、新興の港町ブラックプールを訪れる。

そこで出会ったのは、町で最も強い力を持つトワイライト家の跡取り息子、アラン・トワイライトだった。

望まずに過酷な運命を強いられたエドガーと、生まれながらにして定められた人生を歩まなければならないという苦悩を抱えたアラン。
心を閉ざし、孤独に生きる二人は、次第に惹かれ合っていく。

エドガーがアランを仲間にしたいと目論む一方で、ポーツネル男爵夫妻は、ホテル・ブラックプールで診療所を開くジャン・クリフォードとその婚約者ジェインを一族に加える算段を立てる。

大老ポーはそんな男爵の選択を認めつつ、『海辺の小屋には近づかないように』と忠告を残すのだった。

一方、霊能力者のマダム・ブラヴァツキーは大老ポーの魂に触れ、クリフォードとその友人バイク・ブラウンに銀の弾を手渡し、いずれその銃弾が必要となることを告げる。

そして男爵夫妻は、クリフォードを仲間に引き入れるべく行動を起こすのであった。


以下、ネタバレ注意






何百年にも渡るエドガーの旅をどのように描いていくのかと思っていましたが、バンパネラ研究家に語らせるという形で、エドガーの幼少期から順を追って物語が進んでいきました。

幼いエドガーが赤ん坊のメリーベルとともに森に置き去りにされた1744年から、マルグリット・ヘッセンの甥(グレンスミスの玄孫)ルイス・バードの通うガブリエル・スイス高等学校にイギリスからの転校生としてアランとエドガーが現れる1959年までが、足跡として語られていきます。

この作品のミュージカル化が悲願であった小池修一郎先生が脚本・演出を担当されていますが、70人を超える出演者の一人ひとりに原作の雰囲気を崩さぬよう役が与えられており、物語も細かく練られています。
イケコの30数年の想いが詰まった集大成といっても過言ではないと思います。

原作未読としては、追いかけなければ展開に置いていかれそうで必死でしたが、原作に対する愛がひしひしと伝わってきました。

ベルばらもそうですが、最近の宝塚は原作を知っていればいるほど、舞台を楽しめるような細かいネタが放り込まれている気がします。

今回は萩尾望都先生が作詞協力をしていたり、漫画の名場面が台詞そのまま引用されていたりするので、原作ファンは「こんな細かいところまで舞台で再現してくれるの?!」と感じられるかもしれませんね。

メインキャストは以下の通り。

エドガー・ポーツネル:明日海りお
シーラ・ポーツネル男爵夫人:仙名彩世
アラン・トワイライト:柚香光
大老ポー:一樹千尋
カスター先生:飛鳥裕
老ハンナ:高翔みず希
レイチェル:花野じゅりあ
フランク・ポーツネル男爵:瀬戸かずや
ジャン・クリフォード:鳳月杏
バイク・ブラウン/バイク・ブラウン4世:水美舞斗
リーベル:華優希

明日海さん扮するエドガーは、少年の姿を保つバンパネラ
最初から最後まで、トップスターが少年を演じるという挑戦役です。

幕が開くと、そこいたのは神秘的な雰囲気をまとう、まさに本の中から抜け出てきたようなエドガーの姿!

もう一度言うと、私は原作をきちんと読んだことがありません。
それでもその空気感には思わず息を呑みました。アランだけでなく、観客みんながエドガーに気圧されたはず。

今回明日海さんは、楽曲をそつなく歌いこなすというより、エドガーの葛藤や苦悩を歌声にのせて表現されていました。
容姿の変わらない役柄でありながら、複雑な心情を抱える少年を、魅力たっぷりに体現されているのが素晴らしい。

小池先生の『エドガーはいた』という言葉に、全て込められていると思います。
最初から最後まで美しかったです!

そしてトップ娘役・仙名さんのシーラ。
キャスティング発表まで、エドガーの最愛の妹・メリーベルを演じると信じて疑いませんでした。

小池先生には1789、All for Oneに引き続き今回も驚かせてもらいました。

宝塚の公式HPには、シーラに対してエドガーは憧れを抱いていると書かれていたので、叶わぬ恋心が軸になるのかと思いきや、そんなことは全くありません。

むしろ、作中ではシーラとフランクの純愛がとても丁寧に表現されていきます。

そんなシーラさん、一族に加わるまでの紆余曲折をさらっと語り流します。
苦労しても純粋さを失わない、ひたむきな姿には好感が持てました。それにしても、フランクとの最期は美しすぎて、本当に切ないです…。

そしてアラン役の柚香さん。
男性役でありながら、エドガーの相手役(といっても過言ではない)を務めます。

軽くあらすじは知っていたので、シーラさんが「永遠の時を生きるからこそ、愛が必要なのよ」とエドガーに説くシーンでは、いやいや彼が選ぶのは男性ですよ!と言いたくなったのですが、この作品に性など関係ありませんでした。

エドガーとアランは、二人にしか分からない絆で結ばれていて、そこには私たち観客たちにも踏み込めない世界が広がっていました。

個人的には、歌詞がはっきり聞こえていれば、もう少し感情移入ができたかな?と思います。

私が観た回は、ピンマイクの調子が良くなかったのか、第一幕は結構な出演者の声がこもって聞こえました。
残念でしたが、都度改善されますので今後は大丈夫かと。

舞台の大半でバンパネラを演じる明日海さんと違って、アランは終盤まで人間。人生を悟りながらも、少年らしい演技を保ったまま突っ走っていってほしいです!

リーベル役の華さんは終始可愛らしい!
10代の少年たちが、次々と惚れていく気持ちもよく分かる。

十字架に恐れおののくメリーベルに対し、エドガーは「あいつは弱すぎた」と漏らしますが、エドガーも讃美歌に驚いて逃げ出したりしています。

二人ともバンパネラとして長い時を過ごしていますが、どこか弱い一面を持ち合わせているのは、成人して一族入りを果たしたシーラとは違い、人格形成がまだ完全ではない幼い時分に一族へ加わったためでしょうか。

リーベルを守るためにバンパネラになったエドガーが、最愛の妹を救うことができなかったところは、本当に悲しいですし、なんならメリーベルを撃ったクリフォードが憎くなります。

そんなクリフォード役の鳳月さんは、表面的には好青年を装いながらも、裏で色々な女性に手を出す好色を演じ分けます。
ひどい役回り。しかしそのクリフォードさんを慕い続けるジェインが、また一途で良い。

しかし、女性たちを魅了してやまない“抜群なビジュアル”とは。
クリフォードに関しては、外見のみで一族入りが決定したのではないかと疑ってしまいます。笑

最後に、シーラの相手を務めるフランク。
すらりとした瀬戸さんは、ダンディーな男爵役をスマートにこなします。
スーツとか燕尾服とか、抜群に似合うんだよな、あきらさん…。

二番手だった芹香さんの組み替えもありましたし、今後花組での瀬戸さんの活躍を期待していきたいです!

*もうひとこと*
薔薇の封印では、過去から現代に至るまでに、フランシスとミハイルがパリやベルリンを訪れます。

ジプシーダンサーに扮したフランシスが、1666年にサンジェルマン宮殿で国王ルイ14世にダンス指導をするシーンがあるのですが、All for Oneを観た時もこの作品を思い出して、少し面白かったです。